中野サンプラザ再開発、白紙撤回の背景
東京・中野区の象徴的な存在である「中野サンプラザ」の再開発計画が、突如として白紙に戻された。構想から20年を経てようやく動き出した計画は、工費の急激な高騰により頓挫。2024年9月、野村不動産から総事業費が当初見込みから900億円増加し、3500億円を超えると報告されたことが発端となった。
工費高騰が招いた計画の迷走
2024年7月、野村不動産などの開発業者は、地上61階建て、高さ262メートルの超高層ビルへの建て替え計画について、総事業費を約2639億円と見込み、事業認可を申請。2025年度中の着工、2029年度の完成を目指していた。しかし、その2カ月後、工費が900億円も上振れする事態が判明。区幹部は「900億って…デカい数字だな」と驚きを隠せなかった。
9月中旬、中野区長室で酒井直人区長と野村不動産の松尾大作社長が対面。松尾社長は「本当に今回は不測の事態でした」と陳謝し、認可申請の一時取り下げを申し出た。酒井区長はただうなずくしかなかったという。
タワマン化修正案に批判殺到
その後、野村不動産は計画を1棟から2棟のツインタワーに変更し、住宅割合を4割から6割に引き上げる修正案を提示。これは事業採算性を向上させるためだったが、区議会や住民から「タワマン化」と強く批判された。酒井区長は「中野サンプラザのDNAを継承する施設」を理念に掲げていたが、区議からは「6割住宅ではDNAが残っているのか疑問」との声が上がった。
区長は記者会見で「メリット・デメリットはあるが、悪いこととは考えていない」と反論したが、批判の収束には至らず、一部の区議からは野村不動産との協定解除を求める意見も出た。
協定解除、計画は振り出しへ
区は野村不動産に何度も再考を促したが、担当者は「それは難しい。採算性が合わない」と繰り返した。2025年3月上旬、酒井区長は庁内会議で「一回リセットしようか」と提案。職員たちも同意し、区は野村不動産との協定を解除。計画は完全に振り出しに戻った。
酒井区長は協定解除の決断について、「すごく葛藤があった。しかし、区民が望む施設を実現するには妥協できない」と振り返る。野村不動産は取材に対し、「当社としてお答えできるものはない」と回答した。
再開発の行方と今後の課題
区は2025年3月、新たな計画の方向性を打ち出したが、工費高騰の兆しは見えず、再開発のハードルは高い。区議の一人は「慌てて答えを出さず、区民が望む施設の姿をゼロから考えるべきだ」と指摘する。



