刑事が体験した詐欺電話の手口 「Zoomでの事情聴取はない」と静岡県警が警告
刑事が体験した詐欺電話 Zoom聴取は警察の手法ではない

刑事が直撃した巧妙な詐欺電話 その手口と対策を詳細に解説

近年、後を絶たない特殊詐欺の被害。その手口はますます巧妙化しており、警察官ですら標的になる現実が浮き彫りとなった。静岡県警清水署の刑事が今月上旬、実際に体験したニセ電話詐欺の詳細な手口を、啓発活動の一環として中日新聞の取材に応じた。

国際電話から始まる不審な着信

事件は4月9日午前10時半ごろに発生。刑事のスマートフォンに「+1」から始まる国際電話番号が表示された。応答すると、「大阪府警生活安全課の捜査員」を名乗る「イノウエ」という女性の声が聞こえてきた。20~30代くらいの声で、大阪府警という割には流ちょうな標準語を話していたという。

驚くべきことに、女性は刑事の氏名と住所を正確に伝えてきた。「どこで情報が漏れたんだ」と衝撃を受けた刑事に対し、女性は次のように説明を始めた。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ
  • 「捜査中の事件の主犯格が他人のカードを使って数千万円を引き出している」
  • 「主犯格からあなた名義の銀行カードを発見した」
  • 「あなたが詐欺事件に関与した疑いがあるが、心当たりはあるか」

マニュアルをめくる音が聞こえる不慣れなかけ子

刑事が「ない」と返答すると、女性は「身分証を落としたことは?」などと立て続けに質問。すべて否定すると、一呼吸置いて「あなたの罪名は犯罪収益隠匿罪です。捜査は大阪府警の捜査第2課が担当する」と畳みかけてきた。

この時点で刑事は、典型的なニセ電話詐欺だと瞬時に判断。興味深いことに、女性はしきりにマニュアルとみられる紙をめくる音を立てており、背後には別のかけ子が電話するような音も聞こえたという。明らかに詐欺グループの新規メンバーか、不慣れなかけ子だった可能性が高い。

Zoomでの事情聴取を要求する巧妙な手口

その後、電話は一旦切れたが、再び着信。女性は「事情聴取のため大阪府警の本部に来られるか」と尋ねてきた。仕事で忙しく無理だと伝えると、「では電話での在宅聴取でいいか」と言われ、刑事が午後1時以降なら対応すると答えると、再び電話が切れた。

刑事は上司に報告し、午後は2人で対応することに。午後1時、再びかかってきた電話では、女性がしきりに周囲を気にし「車内に移動しろ」と指示。その後、「大阪府警の別の捜査員」を名乗る男性に電話が引き継がれた。

男性は「犯人は捕まっておらず捜査は極秘だ。暴力団関係者の可能性もあり、身内に危険が及ぶ」と脅しをかけてきた。刑事が「聴取のために大阪に行く」と受け入れると、今度は「電話だと1時間で終わる。無駄足だ」と頑なに拒否。そして「この後Zoomにて聴取する」と言い出した。

被害額が2倍に急増する深刻な状況

ここで刑事はとうとう、自分の身分を明かした。沈黙が続いた後、「どこの警察か言ってみろ」と聞かれ、電話が切れた。その後3度ほど電話がかかってきたが、刑事は出なかった。

静岡県警の統計によると、特殊詐欺の被害は深刻化している。2024年の県内被害は379件で被害額約15億5千万円だったが、2025年は452件で被害額約30億2千万円(暫定値)と、被害額が約2倍に跳ね上がっている。

警察が絶対に行わない「テレビ通話での事情聴取」

刑事は今回の体験を通じて、重要な注意点を強調する。まず、警察がテレビ通話(Zoomなど)で事情聴取を行うことは絶対にない。また、非対面で画面越しに警察手帳を見せることもない。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

近年は末尾が「0110」の警察を装うニセ電話も増加しており、刑事は「まずは相手が名乗った署を確認し、一度公式な番号にかけ直してほしい」と呼びかける。不審な電話がかかってきた場合の基本的な対応として、以下の点を守ることが重要だ。

  1. 相手が名乗った警察署の公式番号を自分で調べる
  2. その番号にかけ直して、本当にその捜査員がいるか確認する
  3. テレビ通話や画面越しの身分証明を要求されたら、即座に詐欺を疑う
  4. 個人情報を安易に伝えない

この刑事の体験談は、詐欺グループの最新の手口を知る貴重な事例となっている。警察官でさえ標的になる現代の特殊詐欺に対し、市民一人ひとりが警戒を強める必要性が改めて浮き彫りになった。