東京都中野区の象徴的存在である「中野サンプラザ」の再開発計画が白紙撤回されてから1年余りが経過した。工費高騰により再開発の行方が不透明となる中、区民の間では存続や計画見直しを求める声が高まっている。6月7日に投開票が行われる区長選を前に、新たな区長のリーダーシップが注目されている。
計画白紙が招いた区民の意識変化
中野サンプラザは、旧区役所と一体的に再開発される予定で、2023年に閉館した。当初、多くの区民は解体をやむを得ないと受け入れていた。しかし、区が大手デベロッパーとの協定を解除したことを機に、地元建築士の十川百合子さん(72)は「今こそ計画を根本から見直す絶好のタイミング」と市民団体を立ち上げた。署名活動や勉強会を通じて、サンプラザの存続可能性を訴えている。
区長のジレンマとデベロッパーの思惑
8年前の区長選で計画見直しを掲げて当選した酒井直人区長も、住民理解という難題に直面している。区は解体を既定路線とし、酒井区長は改修に約170億円かかるとして建て替えの妥当性を説明するが、存続を求める区民との議論は平行線をたどっている。
一方、開発を担う野村不動産は、工費高騰を受けて住宅棟の増加による軌道修正を図ろうとしたが、区民からはタワーマンション化への懸念が根強い。デベロッパー関係者は「マンション建設が利益の柱」と明かし、区の要望をすべて叶えると採算が合わないと訴える。
見直し案の曖昧さ
今年3月、区は見直しの方向性を発表。解体方針を堅持しつつ、住宅規模は「区民ニーズや市場ニーズ、採算性を踏まえる」と明記した。ホールについては、3000~5000人規模を念頭に置きつつ、2000人や1万人の可能性も探るとし、曖昧な内容となっている。区幹部は「規定しすぎると業者が手を挙げない」と説明する。
新たな区長への期待と課題
区は8月に具体的な素案をまとめ、来年2月に新たな事業計画を策定する予定だ。しかし、区議からは「デベロッパーの思うままになる」との懸念が聞かれる。十川さんも「区長の描く将来像が見えない」と疑問を呈する。
工費高騰が続く中、区民が納得する中野の新しい顔を打ち出しつつ、事業を成立させることが新区長に課せられた重責である。6月7日の区長選の結果が、中野の未来を左右する。



