中野サンプラザ再開発、工費高騰で頓挫 デベロッパーとゼネコンの力関係逆転
中野サンプラザ再開発、工費高騰で頓挫 力関係逆転

東京都中野区の象徴的存在だった中野サンプラザの再開発計画が、工費の高騰を理由に白紙撤回されてから1年以上が経過した。この間、建設業界では人手不足や法改正を背景に、従来のデベロッパー優位の構図が崩れ、ゼネコン側が主導権を握る構図が鮮明になっている。31日告示、6月7日投開票の区長選を前に、問題の背景と課題を探った。

工費が2カ月で900億円も高騰

2024年12月、中野区議会の委員会室。再開発を主導していた野村不動産の幹部は、工費が短期間で急騰した背景について、「想定をはるかに上回る見積もりがあった」と証言した。見積もりは、受注した清水建設から提示されたもので、野村不動産側が査定し再協議したものの、清水建設は「軽微な変更では大幅な削減はできない」と譲らなかったという。

ゼネコンとの力関係が逆転

この事例は、デベロッパーとゼネコンの力関係が変化した象徴的なケースだ。かつては、契約後に工費が上がってもゼネコン側が負担するのが常識だった。大手デベロッパー関係者は、「昔は『知らんわ』と無視できた。ゼネコンは接待もしてきて、何かあればすぐに飛んできた」と振り返る。しかし、2021年の東京五輪を境に、工費の上昇とともに「潮目が変わった」という。

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「今では、こちらが安い業者を探す営業をしなければならず、接待される側からする側に変わった」と同関係者は述べ、業界内の主従関係が完全に逆転したと指摘する。

法改正が追い打ち

さらに追い打ちをかけたのが、2024年に施行された2つの制度改正だ。一つは、建設業の働き方改革に伴う残業規制の強化。国土交通省の資料によると、2024年の建設業就業者数は477万人で、ピーク時から約3割減少している。人手不足を解消するための規制強化が、結果的に工費上昇を招いた。

もう一つは、建設業法の改正だ。資材費高騰や人手不足などの「おそれ情報」を発注者に通知する義務が課され、発注者も請負額の変更協議に誠実に応じる努力義務が課された。この法改正により、ゼネコンは工費の上昇を理由に契約額の変更を一方的に通告できるようになった。

ゼネコン側の事情

大手ゼネコンの関係者は、「下請け業者が限られており、奪い合いになっている。どこも人手不足で、物価も賃金も上がっているため、工事費は膨らむ一方だ」と説明する。また、国が下請けへのしわ寄せを禁止したことで、元請けも厳しい状況に置かれている。「都内では消化できないほどの工事量があり、人手不足でいくら払っても人が集まらない。頼まれても断ることが多い」と、工事を選別せざるを得ない実情を明かす。

国際情勢の影響も

最近では、中東情勢の悪化による資材不足やコスト上昇も懸念されている。東急不動産は5月11日の決算会見で、「資材不足による納期遅延やコスト上昇の影響を注視している」と述べた。

大手ゼネコンの関係者は、「よっぽど綿密に計画しないと赤字になる。工事を取る側も発注する側も、大変な時代になった」と語る。再開発の先行きは不透明で、今後の区長選の争点の一つとなりそうだ。

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