奈良国立博物館(奈良市)で開催中の特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現に捧げた祈りと美」において、平安時代の貴族藤原道長(966~1027年)が金文字で記した国宝の経典「紺紙金字経」が、約2年半にわたる修理を終え、一般公開されている。
道長自筆の写経、金峯山に埋納
藤原道長は寛弘4年(1007年)8月11日、自ら筆を執って写経した15巻の経典を金銅製の経筒に納め、金峯山(奈良県吉野町)に埋納した。これらの経典は江戸時代に一度発見されたものの、その後行方が分からなくなっていたが、金峯山寺で再発見された。下半分は腐食が進行した状態で、湿気によって朽ちたと考えられている。
修理完了後初の展示
今年3月に約2年半に及ぶ修理が完了し、修理後としては初めての展示となる。道長が8月11日に金峯山で供養法要を行ったことは、彼の日記「御堂関白記」に記されている。経筒にも道長が同日に法華経や阿弥陀経などを入れて埋めたことが刻まれており、阿弥陀経の巻末には「手ずからこの経を書く」と自筆であることが明記されている。
新たな発見
今回の修理では、経典に記された日付の文字の一部が判読可能となり、埋納された日付が経筒の記載と同じ8月11日であることが改めて確認された。この発見は、道長の信仰と歴史的記録の一致を示す重要な成果となっている。
特別展は6月7日まで開催されており、訪れる人々は平安時代の貴族が心血を注いだ宗教芸術の精華を目前にすることができる。



