「今になってふりかえると、引き返せるポイントはいくつもあったように思う。でも、それがなぜかできなかった」――関西地方に住む60代の女性は、フェイスブックで知り合った男性に好意を抱いて約3カ月やりとりをした末、現金400万円をだましとられた。取材に対し、「相手に依存し、操り人形のようになっていた」と語った。
きっかけは友達申請
2024年12月、あまり更新していないフェイスブックに見知らぬ人からの「友達申請」が届いた。プロフィル写真には50代くらいの日本人に見える男性が花束を持って映っており、旅行やペットの写真を数年前から投稿していた。職業欄には「某社社外取締役」と記載。投資やお金の話題は一切なかった。
女性はパートで医療関係の仕事をしながら夫と暮らし、子どもは独立していた。経済的に困っておらず、物欲も少ない。世間で聞くような詐欺に自分がひっかかるとは思っていなかったという。
普段なら無視するような申請だったが、このころ仕事が忙しく、高圧的な上司に悩まされて精神的に疲れていた。「気持ちをリセットしたい」と魔が差したように承認した。
「ガス抜き」のつもりが深まる関係
承認直後、「グルメや旅行が好きなので、そういうおしゃべりをしませんか」と直接メッセージが届いた。女性も応じ、3日に1度ほどのペースでやりとりが始まった。
夫婦関係は悪くなかったが、夫はたわいもない話を聞いてくれるタイプではなかった。男性とのメッセージ交換は気分転換になり、「こういうガス抜きできる相手を求めていたのかも」と思い始めた。
数週間後、LINEでのやりとりに移行すると、ペースが急上昇。朝・昼・夜と必ずメッセージを交わす習慣ができた。朝は「おはよう」スタンプに天気の話題、夕方には「仕事はもう終わりましたか?しっかり休んでくださいね」とねぎらいの言葉。眠りにつくまで長いときで4時間ほど続けた。
「これから○○さん(女性の下の名前)と呼んでもいいですか?そう呼ぶともっと親しみが感じられますね」「機会があれば、一緒にお酒を飲みたいです」など距離を詰める言葉も出てきた。男性は離婚歴があり、大阪で一人暮らしだという。女性はいつの間にか返信を心待ちにし、日に何度もLINEを確認するようになった。
突然の投資話
最初のやりとりから1カ月半ほどたったころ、スーパーの値上げの話の途中で突然、こうメッセージが届いた。「円安と物価高騰が猛威をふるっています!給料上がらないのに、税金だけ上がる。○○さんは普段個人の資産管理をしていますか?」「貯金よりいいマネジメントあるので、時間がある時に教えますね」
困惑した女性は投資話への誘いをいったん断ったが、関係は終わらなかった。その後も男性は時間をかけ、巧みに心をコントロール。女性は最終的に現金400万円をだまし取られた。
手口の特徴と対策
専門家によると、ロマンス詐欺の犯人は長期間にわたって親密な関係を築き、相手を精神的に依存させた上で金銭を要求する。特にSNSで知り合った相手からの投資話は警戒が必要だ。不自然な親しさや、急な金銭の要求があった場合は、家族や警察に相談することが重要とされる。
被害に遭わないためには、SNS上の見知らぬ友達申請をむやみに承認しない、個人情報を安易に教えない、金銭の話が出たらすぐに疑う、などの対策が有効だ。



