量子科学技術研究開発機構(QST)の研究チームは、生きたマウスの脳を従来よりもはるかに高精細に可視化できる新技術を開発したと、2026年6月4日付の米科学誌に発表した。この技術により、従来の陽電子放射断層撮影(PET)では観察が困難だった0.5ミリメートル単位の微細な脳構造を捉えることが可能になった。
PET技術の限界を打破
PETは、がんや脳疾患の診断に広く用いられる画像診断法で、放射性薬剤を体内に投与し、その分布を画像化する。しかし、得られる画像の解像度はCTやMRIに比べて低く、実験動物用の装置でも分解能は1~2ミリメートルが限界だった。このため、脳の微細な構造変化や疾患の初期兆候を捉えることが難しかった。
新検出器の開発
研究チームは、放射線センサー部を3層構造にすることで、放射線の位置情報をより詳細に取得できる新しい検出器を開発した。この検出器を搭載したPET装置を用いてマウスの頭部を観察したところ、世界最高水準となる0.5ミリメートルの分解能を達成。脳の海馬など、これまで可視化が難しかった部位を鮮明に確認することに成功した。
医療応用への期待
チームは、分解能が1ミリから0.5ミリに向上したことで、理論上8倍の情報量が得られると説明している。この技術を人間用のPET装置に応用すれば、がんやアルツハイマー病などの認知症をより早期に発見できる可能性がある。今後は、臨床応用に向けた研究を進める方針だ。
今回の成果は、脳科学研究や疾患診断の分野に革新をもたらすと期待されている。



