軽油価格カルテル事件、7社が独占禁止法違反で起訴へ 東京地検特捜部が方針決定
東京地検特捜部は、運送業者や建設業者向けの軽油販売において価格カルテルを結んだ疑いで、法人としての石油販売会社7社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で近く起訴する方針を固めた。公正取引委員会からの告発を受けての措置となる。一方、各社の担当者ら個人の刑事責任は問わず、起訴を見送る方向で検討が進められている。関係者への取材により明らかになった。
カルテルに関与した8社とリーニエンシー適用の太陽鉱油
関係者によると、価格カルテルを結んだとされるのは以下の8社である。
- 東日本宇佐美(東京都文京区)
- ENEOSウイング(名古屋市)
- エネクスフリート(大阪市)
- 太陽鉱油(東京都中央区)
- キタセキ(宮城県岩沼市)
- 吉田石油店(香川県三豊市)
- 新出光(福岡市)
- 共栄石油(東京都江戸川区)
このうち、太陽鉱油は課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づき、公正取引委員会に対して最初に違反行為を自主申告した。その結果、同社とその担当者は告発を免れ、起訴されない見通しとなっている。リーニエンシー制度は、独占禁止法違反の早期発見を促すため、最初に申告した企業に罰則を軽減または免除する仕組みである。
公取委と特捜部による合同捜査の経緯
公正取引委員会は昨年5月、神奈川県内の事業所を対象とした軽油販売における別の価格カルテル疑惑について、関係先への立ち入り検査を実施した。調査を進める中で、今回の東京都内を中心とした事件を把握。同年9月には、告発が前提となる犯則調査権に基づき、8社に対する家宅捜索を実行した。さらに今年3月には、東京地検特捜部と合同での捜索を行い、並行して特捜部も担当者らの聴取など捜査を継続してきた。
8社の担当者は、東京都内で開催された会合において、都内に事業所を構える運送や建設業者向けの軽油販売価格を協議し、価格競争を制限したとされている。これらの企業は市場の半分以上のシェアを占めており、その影響力は大きい。
社員個人の起訴見送りと市民生活への波及リスク
8社の担当者は任意の調査に対し、カルテルへの関与を認めたという。特捜部は、長年にわたり社内の特定の役職に就くと、担当業務としてカルテルに関わらざるを得なかった状況や、カルテルによる利益を直接的に享受したのは会社である点などを考慮。その結果、担当者個人の刑事責任を問わない方向で検討しているとみられる。
軽油は主にトラックなどの大型車両、鉄道、船舶の燃料として使用される。原油価格が円安や国際情勢の影響で高止まりする中、カルテルによって軽油価格の競争が妨げられれば、運送業者や建設業者の経費が増加。これが物流コストや建設費用の上昇につながり、最終的には市民生活全体に影響を及ぼす恐れがある。価格操作が広範な経済活動に与える波及効果は看過できない問題である。
本件は、企業の倫理的な経営姿勢と競争政策の重要性を改めて問う事例となっている。今後の司法判断が注目される。



