日本における性的少数者への差別や無理解、それらへの抵抗運動などの歴史をまとめた「LGBTヒストリーブック日本編 平等を求めて声をあげた人々の闘い」が6月15日に発売される。国内の活動や話題を体系的にまとめた書籍は珍しく、当事者以外からの期待も受け、構想から4年半で完成させた。
「『気持ち悪いものを気持ち悪いと言って何がいけないんだ』『マイノリティーはニコニコしてろ』と言われて本当に落ち込んだ」「レズビアンコミュニティーに触れた最初の最初、怖いけど行きたい、だけど怖い、そんな高校生の時の気持ちをまざまざと思い出した」――5月中旬、都内であった出版イベントで、出版に携わった人など約10人が、本の内容と自身の体験を重ね合わせて語った。
約30人にインタビュー、人づてに資料集め
書籍は全375ページ、7章立て。16世紀に日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルら宣教師たちが「男色文化」を「罪悪」と非難した歴史から始まり、第1章は性別適合手術を行った医師が優生保護法に違反したとして有罪判決を受けた「ブルーボーイ事件」があった1960年代までを伝える。
第2章からは、2020年代までを10年ごとにまとめ、商業ゲイ雑誌やレズビアンミニコミ誌の発行、エイズ予防法案への反対運動、日本初のプライドパレードの開催、性同一性障害者特例法の成立、同性パートナーシップ制度の開始、同性婚訴訟の広がりなどを取り上げた。
編著者の山縣真矢さん(59)は「LGBTQの『人権運動としての歴史』を通史的に書いた本はこれまでになかった」と話す。時代をさかのぼるほど性的少数者の活動は水面下で行われ、裏付けには苦労したという。1970~90年代当時、活動をしていた約30人に直接会ってインタビューをしたり、データ化されていない紙の資料を人づてに集めたりした。東京だけでなく、地方の話題も意識して取り上げた。
山縣さん自身はゲイの当事者。他のセクシュアリティーに関する出来事もバランス良く載せるために、トランスジェンダー理論や性別移行のための医療の研究者、レズビアンコミュニティーとのつながりがある当事者にも執筆を依頼した。
出版のきっかけは「日本版はないんですか」の声
出版のきっかけの一つは、海外のLGBTQ歴史書を目にした際に「日本版はないんですか」と問われたことだった。山縣さんは「海外の事例ばかり紹介されても、日本の文脈で理解するのは難しい。日本独自の歴史をまとめる必要があると痛感した」と振り返る。構想から完成までには4年半を要し、その間、新型コロナウイルスの影響でインタビューが中断するなどの困難もあったが、粘り強く続けた。
この本は、LGBTQの歴史に詳しい専門家だけでなく、一般の読者にも手に取ってもらいたいという思いで作られた。山縣さんは「当事者だけでなく、周囲の人々にも読んでほしい。歴史を知ることで、多様性への理解が深まるはずだ」と語る。
出版イベントでは、参加者から「自分たちの歩みが形になってうれしい」「学校の図書館にも置いてほしい」などの声が上がった。書籍は全国の書店やオンラインで購入可能で、一部の図書館にも寄贈される予定だ。
日本におけるLGBTQの歴史を一冊にまとめた画期的なこの本が、今後の社会の多様性理解の一助となることが期待される。



