『二大政党制と多党制』書評 多様な時代に政党の役割問う
『二大政党制と多党制』書評 多様な時代に政党の役割

『二大政党制と多党制 政党政治の実相と可能性』待鳥聡史著(朝日選書)が刊行された。本書は、政党政治の本質を歴史的・比較政治学的な視点から考察する意欲作である。

二大政党制の歴史と現状

満25歳以上の男子を対象とした普通選挙法が制定されてから昨年で一世紀を迎えた。その同時期に、政友会と民政党という二大政党を中心とする政党政治が日本に定着していった。しかし、その政党政治は今や岐路に立たされている。本書は、このタイミングで「政党政治とは何か」を問い直す。

明治以降の日本が理想としてきたのは、イギリスやアメリカに代表される二大政党制である。政治学的には、上位二政党の議席占有率が80%を超え、有効政党数が2.0以下を継続的にとるシステムを指す。本書では、このシステムがイギリスとアメリカで形成された歴史をたどり、現在のあり方、利点と欠点をわかりやすく解説する。

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多党制との比較と誤解の解消

特に多党制と比較した場合、二大政党制には「政党間競争を促す」「少数派を抑圧する」「社会に分極化をもたらす」といった誤解がある。著者はこれらを丁寧に説き起こし、実際には二大政党制が必ずしもそうではないことを示す。

政党政治の限界と新たな課題

しかし、イギリスやアメリカはもちろん、日本でも政党政治に限界が訪れていると言われて久しい。近年では、環境問題やジェンダー平等といった新しい価値観をめぐり、党内分裂や新党の登場が相次ぐ。さらに、1980年代から見られる社会経済的格差の拡大により、既成政党や政策路線への信頼が失われている現状がある。

著者の提言:二大政党制のバージョンアップ

こうした状況に対し、著者は二大政党制をバージョンアップすることで、政党の役割を再び高め、社会の多様性を前提とした利益集約と急進勢力の台頭抑止を追求する方策を提案する。世界的に政治の停滞が叫ばれる今、この見解は傾聴に値する。

本書は、政党政治の実相を理解する上で貴重な一冊である。(1760円)

評:君塚直隆(歴史学者・駒沢大教授)

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