慶応大で新講座「アニメ平和学」開講
慶応大学は2026年4月から、新しい学問領域「アニメ平和学」の講座を開講した。アニメの技法や産業、文化的影響力を多角的に学び、国際的な相互理解や共感、共生に結び付ける可能性を探るという。実際の授業内容を取材した。
「鉄腕アトム」「宇宙戦艦ヤマト」「エヴァ」が転換点
4月28日の授業では、デジタルハリウッド大学の津堅信之特任准教授(アニメーション研究)が日本のアニメ史を解説。「日本のアニメには3作品による転換点がある」と語った。3作品とは、アニメビジネスを広げた「鉄腕アトム」(1963年放送開始)、視聴者層を子どもからヤングアダルトに広げた「宇宙戦艦ヤマト」(1974年)、ビデオの売り上げを大きくした「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)だ。津堅准教授は「日本はディズニーを手本としてきたが、その流れから逸脱していった」と説明。また、「機動戦士ガンダム」(1979年)については、敵側を絶対悪として表現せず、「本当に正義は正義なのか、敵は敵と言えるのかと価値観を相対化させている」と指摘した。
「社会性の欠如」とドキュメンタリー・アニメの可能性
一方で津堅准教授は「日本アニメの領域は広いようで、描かれる物語やキャラクターが画一化している。現在の社会問題を踏まえてどんな作品を作るのかを考える『社会性』が欠如している」と批判。過去の史実や人物伝をアニメで描く「ドキュメンタリー・アニメーション」が世界各国で注目を集めているとし、日本でも増えることを期待した。
講座の概要とNetflixの参画
「アニメ平和学」講座は7月までの全14回で、439人が受講している。研究者や評論家がアニメにおける戦争や宇宙政策の表現などを解説し、海外の日本大使館公使や総務省職員が日本アニメの海外戦略や外国からの評価について語る予定だ。講座は動画配信大手Netflixの寄付で成り立っており、同社社員が授業に登壇するのも特徴だ。Netflixは「世界190以上の国と地域で日本のアニメを届けてきた配信の現場で得られた知見を共有し、学術的な検討に資することを目的としている」と回答した。
学生の声
受講した法学部4年の山本唯那さん(21)は「アニメは誰でも見たことがあり語ることができる。それを学問的に学び知識として身に付けたい」と語る。法学部3年の出田梓さん(20)は「アニメが平和にどう結び付くか気になって受講した。イラン情勢など世界で紛争が多くなっている。日本のアニメが平和貢献に役立つ可能性が見つかればいい」と話した。
担当教員の期待
講座を担当する水谷瑛嗣郎准教授(メディア法)は「まず第一にアニメにはコンテンツの内容、描き方、文化外交のツールとしての役割などさまざまな側面で考えられることを知ってほしい」と話す。今回の講座は実験的な取り組みで、明確なゴールは設定されていないという。講座の最後の2回は、アニメの社会的価値などを自由に話し合い、学生自身がアニメ平和学について考える。水谷准教授は「アニメによって、広義の平和と言える対話や相互理解にどんな影響があるかを考え、その可能性を見つけていってほしい」と期待を込めた。



