絶滅危惧種のニホンウナギが国内で完全養殖され、世界で初めての一般向け販売が29日、試験的に始まった。稚魚「シラスウナギ」の漁獲量が減少する中、国は天然の稚魚を使わない完全養殖の研究に取り組んできた。価格はまだ割高だが、商業化に向けた大きな一歩と期待されている。
販売開始の詳細
東京・築地の「山田のうなぎ」ではこの日、完全養殖ウナギの冷凍かば焼きが1尾4500円(税込み)で販売された。皮が薄く、肉付きや脂ののりも良く、従来のウナギと比べても遜色ない味に仕上がっているという。
販売されたのは、店を経営する養殖会社「山田水産」(大分県)が完全養殖で育てたウナギだ。人工授精で生まれたウナギから採卵し、さらに成長させた。山田水産は2022年から国立研究開発法人「水産研究・教育機構」(水研機構)に技術指導を受けながら取り組んできた。
今後の販売計画
完全養殖ウナギは、イオングループのECサイトのほか、7月からは日本橋三越本店でも販売される予定だ。販売価格は通常の養殖ウナギの約2倍だが、山田水産の加藤尚武取締役は「長年の努力でようやくここまできた。技術を磨きながら、コストなどを下げ、少しでも多くの人に食べてもらえるようにしていきたい」と語る。
完全養殖の背景と意義
ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。天然のシラスウナギの漁獲量は年々減少しており、資源保護が急務となっている。完全養殖技術の確立は、天然資源に依存しない持続可能なウナギ生産を可能にする。
国はこれまで、水研機構などを中心に完全養殖の研究を推進してきた。2022年には水研機構が完全養殖の技術マニュアルを公開し、民間企業への技術移転が加速した。山田水産もその一社で、約4年の研究期間を経て今回の販売にこぎ着けた。
課題と展望
完全養殖ウナギの価格は現在、通常の養殖ウナギの約2倍と高価だ。生産コストの低減が今後の課題となる。しかし、技術の進歩と生産規模の拡大により、価格は徐々に下がると期待される。
また、完全養殖ウナギは味や品質でも高評価を得ており、消費者からの需要も見込まれる。山田水産は今後、生産量を増やし、小売店や飲食店への供給を拡大する計画だ。
完全養殖の商業化は、ウナギ資源の保護と日本の食文化の維持に貢献するものとして注目されている。



