弁護士会長が語る手話通訳の課題、裁判所での意思疎通の壁と社会の理解不足
弁護士会長が語る手話通訳の課題、裁判所での意思疎通の壁

弁護士会長が明かす手話通訳の現状と課題

福岡市中央区に拠点を置く「福岡手話の会」は、1972年の設立以来、半世紀以上にわたり手話ボランティア活動を継続している。会長を務める岡部信政さん(55歳)は、弁護士としての専門知識を活かし、聴覚障害者や手話通訳者の支援と地位向上に尽力している。特に、旧優生保護法を巡る国家賠償請求訴訟では、福岡訴訟の弁護団として聴覚障害のある原告の代理人を担当し、その経験から「国や社会全体の理解不足」という深刻な問題を浮き彫りにした。聴覚障害者に寄り添った社会の実現に向け、岡部さんは現状と課題を率直に語る。

多岐にわたる活動内容と公的支援の限界

福岡手話の会は、聴覚障害者のスポーツや文化芸術行事のサポート、介護施設や病院への訪問活動を実施している。さらに、通訳者派遣のボランティアも重要な役割だ。岡部さんによれば、病院の受診や法律相談などには公費による通訳派遣が行われる一方、携帯電話や保険契約など日常生活に不可欠な場面では、公的支援が適用されないケースが多いという。この課題に対処するため、同会は自治体への働きかけも積極的に行っており、例えば、福岡マラソンに手話通訳者が配置されていない問題を指摘し、2026年3月には福岡市に対して改善を要請した。

国家賠償請求訴訟での経験と直面した障壁

岡部さんは、聴覚障害を理由に不妊手術を強制された夫婦らが国を訴えた国家賠償請求訴訟において、福岡訴訟の弁護団を担当した。2018年に仙台で全国初の訴訟が提起されたことを契機に、関係者からの相談を受け、福岡でも裁判を起こすことになった。訴訟では、原告と手話通訳者の調整役を務め、本人尋問の準備を入念に行った。手話には「あの時」や「その際」といった抽象的な表現がなく、聴覚障害者が理解しやすいよう、具体的な言葉で質問を組み立てる必要があった。岡部さんは「手術を受けたと聞いた時は」などと明確に表現し、何度も練習を重ねて本番に臨んだという。

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裁判所での意思疎通の難しさと改善への道のり

訴訟を通じて岡部さんが強く感じたのは、国を含む社会全体の当事者理解の不足だ。尋問の際、裁判官や国側の代理人が理解しづらい言葉で原告に問いかけ、意思疎通が図れない場面が頻発した。さらに、裁判所の入り口に案内役が不在だったり、裁判所自体が手話通訳者を手配しなかったりする事例もあった。岡部さんは裁判所に対して改善を要望したが、根本的な解決には至っていない現状を憂慮する。聴覚障害者が日本語で意思疎通を図ることの難しさは、言語的障壁だけでなく、制度的な支援の欠如にも起因していると指摘する。

岡部さんは、これらの課題を克服するためには、社会全体が聴覚障害者のニーズを深く理解し、手話通訳の充実や環境整備を推進することが不可欠だと強調する。福岡手話の会の活動は、単なるボランティアを超え、人権尊重と共生社会の実現に向けた重要な一歩となっている。

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