ピエトロ、ドレッシング3億本出荷の軌跡 ファン作りと農場が成長の礎に
オレンジ色のキャップが特徴的なドレッシングで知られるピエトロ(本社:福岡市)は、創業から46年を経て、主力商品の「和風しょうゆ」味ドレッシングを累計3億本以上出荷するまでに成長した。この成功の背景には、創業者から受け継がれた顧客重視の経営哲学と、博多湾に浮かぶ能古島での農場開墾による交流活動がある。
能古島の農場「のこベジファーム」 利益より交流を重視
福岡市西区の能古島では、ピエトロの社員らが自社農場「のこベジファーム」で畑作業に励んでいる。同社は島の面積の約3%に相当する13ヘクタールの土地を保有し、ニンニクや大根、レモンなど季節の作物を栽培。収穫した野菜は主に自社レストランで使用している。
この農場は、創業者・村田邦彦氏(2017年死去)が1990年に取得した土地を2004年から開墾して始まった。目的は利益追求ではなく、社員研修や一般向け食育イベントを通じた交流だ。農場で働く大坪則明さん(54)は「建物の補修など、できることは自分たちで行うため大変だが、大切な拠点です」と語る。
ファンベース経営で長期関係構築 株主も10年以上保有
ピエトロは顧客や株主、取引先を「ファン」と位置づけ、双方向の関係を重視している。この姿勢に賛同する株主の中には、株式を10年以上保有する人も少なくないという。村田氏の後を継いだ高橋泰行社長(61)は2020年、「ファンベース経営」を掲げ、顧客の声を経営に反映させて中長期的な価値向上を図る手法を打ち出した。
担当の加来聡子執行役員(48)は「ファンベース経営は会社の原点です。双方向の関係を大切にしたい」と強調する。
レストラン発祥のドレッシング 手作業へのこだわり継承
ピエトロの起源は、1980年に村田氏が福岡市・天神で開店したパスタ店にある。来店客に提供していたサラダのドレッシングが好評を博し、「購入したい」との声が相次いだため、1981年に商品化。オレンジ色のキャップを採用して販売を開始した。
国産タマネギを豊富に使用したしょうゆ味ベースのドレッシングは販路を拡大し、1990年には福岡県古賀市に工場を設立。大量生産が可能になっても、タマネギのカットは1日2万個以上を従業員が手作業で行うなど、創業時からのこだわりを守っている。
ドレッシング事業の西川舞マーケティングデザイン部長(41)は「お客さまにおいしいものを届けるという思いを受け継いでいます」と説明する。
グループ売上高100億円超え 新工場と第3の柱で成長持続
ドレッシングの年間販売額は直近で50億円超と、グループ全体の売上高の約半分を占め、アジア諸国などにも輸出を展開。「焙煎香りごま」や「まろやかレモン」などラインナップを拡充し、2026年3月には新味「うま塩」を発売予定だ。
レストラン事業も九州5県を含む全国で約40店を展開し、創業地の本店は2021年に改装してカウンター席などを新設。コロナ禍で一時的に悪化した業績は回復し、2024年3月期のグループ売上高は101億円と12年ぶりに100億円を突破。2026年3月期は過去最高の117億円を見込む。
一方で、原材料費や物流費の上昇といった課題にも直面。ドレッシングは2022年と2023年に値上げし、古賀市で新工場を完成させて生産性向上を図る計画だ。さらに、冷凍パスタなどの高級ブランド「シェフの休日」を第3の柱として育成中で、滑川剛・冷食営業部長(53)は「高価格帯市場をリードしたい」と意気込む。
食品業界全体の値上げ傾向 ピエトロの対応と展望
原材料価格の高騰は食品業界全体に影響を及ぼしており、リンガーハットやロイヤルホールディングスなど外食大手も値上げを実施。帝国データバンクの調査によると、2025年に値上げされた飲食料品は2年ぶりに2万品目を超え、値上げが常態化する見通しだ。
ピエトロはこうした環境下でも、ファンベース経営と能古島農場での交流を基盤に、持続的な成長を目指している。創業時の理念を守りつつ、新たな挑戦を続ける姿勢が、3億本の出荷実績を支えている。