本格的な夏の到来を前に、家庭用エアコンの取り付け工事が例年以上に混雑している。来年春から施行される省エネ基準の強化により、買い替えの駆け込み需要が高まっていることが主な要因だ。さらに、中東情勢の悪化に伴う部材不足が、この混雑に拍車をかけている。
工事待ち3週間、驚きの声
千葉県鎌ヶ谷市に住む自営業の男性(43)は、自宅の居間で10年以上使用していたエアコンが故障し、5月18日に買い替えたところ、工事が集中して取り付けが最短で6月10日になると告げられた。「工事まで3週間ほどかかると聞き、驚いた」と語る。今年は暑さが早く到来し、小学4年生の娘にはすでにあせもができており、早期の取り付けを切望している。
大手家電量販店も予約難航
家電量販大手のヨドバシカメラのインターネット通販サイトでは、6月3日午後8時45分時点で、東京23区と埼玉県の予約枠がすべて埋まり、「ご相談ください」と表示されていた。ビックカメラのサイトでも、6月4日午前9時現在、千代田区など東京都心6区の取り付け工事予約が6月28日まで埋まっている。広報担当者は「例年より混雑している」と説明する。
「エアコン2027年問題」が背景
関係者によれば、この工事集中の背景には「エアコン2027年問題」がある。政府は2027年4月、脱炭素目標の一環として、家庭用エアコンの省エネ基準を大幅に引き上げる。現在販売されている低価格帯のエアコンの多くが新基準を満たさないため、同年4月以降は安価な機種が市場から消えるとの見方が広がり、買い替えを前倒しする消費者が増えている。
福島県会津若松市の会社員男性(29)は5月、自宅で30年近く使っていたエアコン2台を買い替えた。「2027年問題で値上がりする前に、少しでも安く購入したいと考えた」と話す。
出荷台数が前年比3割増
日本冷凍空調工業会などによると、4月の家庭用エアコン国内出荷台数は約102万9000台で、前年同月比29.5%増加した。これは統計を開始した1971年以来、4月としては最多の記録である。
東京都江東区の電器店「栄電気」では、今年に入ってからのエアコンの売れ行きが前年同期の約3倍に急増。工事の予約は現在40件ほど入っている。社長の沼澤栄一さん(59)は「例年は6~7月が繁忙期だが、今年は4月から忙しい。取り付け工事は1件あたり約2時間かかるため、数をこなすのが難しい」と語る。
中東情勢が部材不足に拍車
中東情勢の悪化も、工事の遅延に影響を与えている。取り付け工事に使用するナフサ(粗製ガソリン)由来の部材が入手困難になっているというのだ。
横浜市旭区の家電工事業を営む男性(61)は「配管を覆うカバーなどが手に入りにくくなっている。問屋にも在庫がなく、ホームセンターをあちこち回って調達している状態だ」と明かす。中には半月以上待たせている顧客もおり、部材を確保している別の工事業者を紹介するケースもあるという。
部材を製造する新潟県のメーカーでは、3月頃から配管(ドレン管)や配管カバーの注文が殺到し、対応が追いつかない状況が続く。担当者は「原料の調達が難しくなっている」と認めた上で、「中東情勢を受けて、多くの業者が部材を早めに確保しようとしている影響もあるのではないか」と推測する。
消費者へのアドバイス
気象庁の3か月予報によると、6~8月の平均気温は全国的に平年より高い見込みだ。消費者はどのように対応すべきか。
家電ライターの田中真紀子さんは、「まずは今のうちにエアコンの試運転を行い、不具合があれば早めに買い替えてほしい」と勧める。さらに、「本格的な暑さの中でエアコンが使えないと命に関わる恐れがある。取り付け工事が先になる場合、工事不要で冷風を出せるポータブルクーラーを備えておくのも一つの手段だ」と指摘する。



