連載「目指せ!ブルーカラーミリオネア」では、現業職・ブルーカラーの賃金上昇の実態と背景を探る。第2回は、タクシー運転手やとび職など現場職の年収が急伸している現象を、リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗氏に聞いた。
現業職の賃金、5年で大幅上昇
厚生労働省の調査に基づき、145職種の概算年収を2020年と2024年で比較したところ、タクシー運転手やとび職などの現業職が全体平均を大きく上回る事例が目立った。コロナ禍で一時的に賃金が抑制された影響も考慮する必要があるが、多くの職種で現業職が事務職の年収を追い抜いた。これは人手不足を背景に賃金を引き上げ、人材の確保・定着を図る市場メカニズムが正常に機能した結果と言える。
人手不足の深刻化が主因
古屋氏は、背景として人手不足の深刻化を挙げる。有効求人倍率が高い職種ほど賃金が伸びる傾向があり、日本ではバブル崩壊以降30年間デフレが続き賃金がほぼ動かなかったが、2022年春ごろからのインフレやコロナ禍後の需要拡大で人手不足が深刻化し、賃金が需給で変動する時代に入ったと指摘する。
「ブルーカラービリオネア」は日本でも起こるか
米国では、AIに代替されにくい建設や配管などの現業職が高収入を得る「ブルーカラービリオネア」現象が指摘されている。日本ではどうか。古屋氏は、米国では転職が活発で外部労働市場が成熟しているため、ホワイトカラーから現業職への移動が起こっているが、日本では事務系も人手不足で賃金が下がっていないため、そうした移動はほとんどないと説明。ただし、現業職種間では高い賃金を求めた移動が発生している。今後、AIの普及で事務系の需要が減り賃金差が縮まれば、日本でも米国のような状況が起こり得るとする。
今後の年収展望と働き方の変化
今後も年収の伸びが続くかは不透明だが、重要なのは稼げる仕事が変化する時代になったことだ。現在はタクシー運転手や大工の年収アップが目立つが、自動運転やフィジカルAIの開発が進めば状況は一変する。従来の「商社に入れば高収入」といった固定化された賃金ヒエラルキーは崩れつつある。労働需給で人手不足な職種ほど賃金が上がりやすい構造は変わらず、「今の社会に求められている仕事」を意識し、柔軟に仕事を選ぶことが求められる時代となっている。



