原子力事故に備え10年、福井の支援センターが遠隔ロボット・重機・ドローンで万全体制
原子力事故に備え10年、福井の支援センターが遠隔機材で万全体制 (16.02.2026)

原子力災害に備える遠隔操作の専門組織が10年の節目

原子力施設で重大な事故が発生した際、放射線量が高い危険な場所でも、ロボットや重機、ドローンなどを遠隔操作して事故収束作業を行う専門組織が福井県美浜町に存在する。東京電力福島第一原子力発電所の事故から得た教訓を基に、電力事業者によって設立された国内唯一の組織であり、今年で設立から10年という節目を迎えた。

福島第一原発事故の反省から生まれた即応体制

福島第一原発事故では、原子炉建屋や敷地内の放射線量が極めて高くなり、作業員が現場に立ち入ることが困難となり、バルブ操作などの必要な作業が滞る事態が発生した。この深刻な経験を踏まえ、遠隔操作が可能なロボットや建設機械の必要性が強く認識されるようになった。

組織の正式名称は「美浜原子力緊急事態支援センター」である。電力事業者の団体である「電気事業連合会」が、原子力発電に特化した事業を展開する日本原子力発電に依頼し、同社が2016年に設立を実現させた。全国の原発を保有する電力会社9社や日本原燃などが資金を提供し、日本原子力発電が運営を担う体制を構築している。センターは24時間即応可能な態勢を整えており、緊急時には迅速な対応が求められる。

充実した機材と訓練プログラム

現在、センターには21名の職員が常勤しており、以下の機材を保有している。

  • 屋内外の情報収集や障害物除去を行う中型・小型の遠隔操作ロボット:計8台
  • 大型・小型のショベルカー:計3台
  • 上空からの情報収集用ドローン:2台

さらに、独自の輸送手段として大型トラック2台、中型トラック8台、ワゴン車2台を車庫に備えている。これらの機材は、がれきを除去しながらバルブや配電盤にアクセスし、操作を実行できるように設計されている。

特に注目されるのは、地雷除去など軍事用途で開発された米国製の中型ロボットである。幅80センチ、長さ140センチ、高さ50センチのこの機体は、アームと「グリッパー」と呼ばれる把持装置を備え、約100キログラムの重量物を持ち上げて移動することが可能だ。小型ロボットはカメラやセンサーで詳細な情報を収集し、アームを用いてドアを開けるなどの繊細な作業を担当する。いずれのロボットも、放射線防護対策が施されたトラックの荷室から約100メートル離れた場所で遠隔操作が行える。

平時の訓練と全国規模の移動演習

万一、原子力発電所で事故が発生した場合に備え、職員はロボットや重機、ドローンを車両に積載し、24時間以内に現場に到着できるよう準備を整えている。平時においては、原発作業員を対象とした機材の使用法講習を実施している。

訓練では、原子力発電所内部を再現した特別な部屋にがれきや倒壊した鋼材を配置し、ロボットなどを用いた遠隔操作の実技演習を行う。昨年11月までの実績では、初めて受講する「初期コース」を1464名が、2回目以降の「定着コース」を延べ1600名以上が修了した。事故発生時には、センターの職員とともに、これらの訓練を受けた作業員がロボットや重機の操作に当たる可能性がある。

加えて、北海道から鹿児島まで全国に所在する原子力発電所や関連事業所への移動訓練も定期的に行われている。道路が寸断される事態を想定し、自衛隊の輸送艦やヘリコプターを用いた機材の積み込み・輸送訓練を実施し、緊急時の円滑な連携を確認している。

10年の歩みと今後の展望

センターの白石浩一所長(64歳)は、「出動を要するような深刻な事態が起こらないことが最善ですが、万一の場合に備え、迅速な事故収束を実現するための準備を常に万全にしておきたいと考えています」と語る。設立から10年を経た今、同センターは技術の進歩に応じてドローンの機種を更新するなど、時代に即した装備の強化を図りながら、原子力安全への貢献を続けている。