スモーキングルーム第253回:戦争犯罪と共犯関係の深層を探る千早茜の新章
スモーキングルーム第253回:戦争犯罪と共犯関係の深層

静寂に響く問い

金ボタンが沈黙を守っていると、兎耳が口を開いた。「世界が注目している戦争犯罪の裁判だ。名だたる小説家も傍聴に行っているらしい」と語り始める。「私も取材したいところだが、新聞で十分だろう。総統に与した者は誰も自らの行いを悪事と認めない。あれは戦争だった、上からの命令だったと言うだけだ。体裁だけの裁判だよ」

金ボタンは「そうですか」とだけ返した。兎耳は砂糖煮の娘に近づき、片手を広げる。砂糖煮の娘が新聞を挟んだ棒を手渡すと、「ありがとう」と笑い、音を立てて新聞をめくる。紙面に目を走らせながら、兎耳は歌うような口調で続ける。「そもそも、戦争犯罪人は政治家や軍人だけだろうか。収容所での大量虐殺は罪で、市民による街ぐるみの迫害は不可抗力だった? あのスモーキングルームには統一時代に戦争の経済的利益を享受していた者がいるんじゃないか。彼らは当時のことを忘れた顔をして、これからの話をしているんだろう」

過去の影

黙ったままの金ボタンを、砂糖煮の娘が見上げる。経済的利益は自分たちも得ていた。ホテルを支援していた「血の令嬢」の家は隣国一の兵器商で、彼女の父親は工場で収容所から連れてきたJを酷使し、数万人を死なせたとして起訴されていた。「僕らは共犯者だよ」と言った煙の顔が蘇る。夜の湖面のように静かな眼をしていた。戦時中に得ていた糧が、針金の犠牲の上に成り立っていたと知っても、煙はあの眼を保てるのだろうか。

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「別に責めちゃいない」と兎耳が笑い、金ボタンは自分が険しい顔をしていることに気づいた。「ただの雑談だよ。ホテルマンなら飽き飽きだろう。けれど、統一時代に君たちが耳にした雑談は別だ。連合国側が涎を垂らして欲しがるだろうな。例えば、総統の黄金列車の噂とかさ。奴らが略奪した美術品や宝飾品が山と積まれた列車が、秘密裏に掘った地下道に隠されているって話だよ。もしくは奴らが開発していた最先端の兵器の情報……」

金ボタンは再び沈黙する。彼の胸中には、戦時中の記憶と現在の立場が交錯する。共犯者という言葉が重くのしかかる。砂糖煮の娘は黙って金ボタンを見つめている。兎耳の言葉は、単なる雑談ではなく、過去と向き合うよう促す鋭い問いかけだった。

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