満腹でござる倫太郎食日記第10回:品川へ向かう道中で腹が鳴る
満腹でござる倫太郎食日記第10回:品川へ向かう道中

倫太郎が目指す米倉家の江戸屋敷は、牛込御門内に位置している。江戸勤番を経験した親戚から道順を記してもらったものの、国元を一度も出たことがない倫太郎は、無事に辿り着ける自信がなく、少々不安を感じていた。

藤左衛門からの三通目の書状

そんな折、叔父の藤左衛門から三通目の書状が届いた。倫太郎の返書のすぐ後にしたためたものだろう。書状にはこう記されていた。「賄頭の了解もすでに取り付けた。うまく事が運べば、殿にも目通りが叶うだろう。その際、衣装はおれのを貸す、なんの心配もいらない。それから、さすがに江戸は不案内であろうから、品川宿まで迎えに行く。」

倫太郎はこの手紙を読み、感激した。何から何まで気遣ってくれている。出迎えも、下役やお屋敷出入りの下男ではなく、叔父の藤左衛門直々だ。待ち合わせは、品川宿の『真砂屋』という料理屋で、一緒に昼飯を食い、舟に乗ってゆるりと江戸屋敷へ向かおうという内容だった。万事任せておけ、と結ばれていた。

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心優しい叔父の思いやり

母は藤左衛門のことを「いい加減でせっかち」と言っていたが、倫太郎には心優しい叔父に思えた。品川に昼飯時に到着するには、川崎宿で一泊して、六郷川の渡しを使うのが一番良さそうだと倫太郎は判断した。そうすれば、宿場の名物を食しつつ、ゆるりとした旅ができる。川崎大師にも足を延ばせるかもしれない。川崎では名物の奈良茶飯を食べねばと思っている。どんな味なのか楽しみでならない。

そう考えていると、腹が鳴った。倫太郎は思わず腹を押さえたが、再び鳴る。すれ違った者が妙な顔をした。聞こえたのかもしれない。情けないと思いつつも、ともかく程ヶ谷宿までは我慢だ。食い物は腹が減っていればさらに旨さが増す。

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