将棋界で注目を集める第67期王位戦(伊藤園お~いお茶杯、中日新聞社など主催)の挑戦者争いが最終局面を迎えている。藤井聡太六冠(23)=愛知県瀬戸市=が保持するタイトルに挑む挑戦者を決める決定戦に進出したのは、歴代最多となる通算99期のタイトル獲得記録を持つレジェンド、羽生善治九段(55)と、藤井六冠とともに現代将棋の二強として知られる伊藤匠二冠(23)である。両者の対局は5月28日に実施される。
羽生九段、復活の兆し
羽生九段は、8日に行われた挑戦者決定戦進出をかけた一局で、震える手で駒を動かした。この震えは、難解な局面を乗り越え、勝利への道筋を見いだしたときに現れるとされる。羽生九段は「最後の最後で、やっと勝ちかなと思った」と振り返り、序盤から相手に主導権を握られながらも終盤で逆転勝利を収めた。かつて「羽生マジック」と称された勝負術が健在であることを印象づけた。
中学3年でプロ入りし、トップ棋士へと駆け上がった羽生九段は、1996年に25歳で史上初めて当時の全七冠を独占した。しかし、一般的に棋力のピークは20代から30代とされ、2018年には若手棋士の台頭により48歳で無冠となった。その後、50歳で竜王戦、52歳で王将戦に挑んだが、タイトル獲得には至らなかった。
しかし、昨年6月に2年間務めた日本将棋連盟会長を退任して以降、羽生九段は好調を維持している。10連勝を含め、ここまでの勝率は7割に達する。羽生九段は「自分でも要因はよく分からないが、以前よりは将棋に費やせる時間は増えたかなと思う」と控えめに語る。また、数年前から伊藤二冠を誘い、一対一の研究会を継続。後進から学びながら、AI(人工知能)研究で複雑化する現代将棋の最前線に復帰した。
50歳以上でタイトル挑戦した棋士は、羽生九段を含めてわずか4人。さらにタイトル獲得となれば、過去に故大山康晴15世名人しか達成していない。決定戦は、その偉業への通過点となる。羽生九段は「良い状態で当日を迎えたい」と意気込みを語る。
伊藤二冠、ライバルへの挑戦
一方の伊藤二冠は、小学校時代からのライバルである藤井六冠から、2024年に叡王、2025年に王座を奪取している。その王座戦の挑戦者決定戦の相手は羽生九段だった。両者の過去の対戦成績は3勝2敗と拮抗している。伊藤二冠は「数年前から羽生九段に将棋を教わり、第一感や形勢判断の的確さなど、常に強さを感じてきた。こういう舞台で対戦できるのはとてもうれしい」と語る。
決定戦の模様は、中日新聞の公式YouTubeチャンネル「将棋チャンネル」でライブ配信される予定である。
王位戦七番勝負の日程
王位戦七番勝負の第1局は、7月4日と5日の両日、浜松市の浜松八幡宮楠俱楽部で行われる。藤井六冠のタイトル防衛なるか、新たな挑戦者が誕生するか、注目が集まる。



