能登町のそば店「夢一輪館」、地震乗り越え再開
能登町で手打ちそば店「夢一輪館」を営む高市範幸代表(74)は、2024年1月の能登半島地震で店が一部損壊したものの、自費で修繕し約5カ月後に営業を再開した。地域おこしに人生を捧げてきた高市さんは、「これまでの恩返しをするためにも店を閉じたらだめだ」と強い思いで店を継続する決意を語る。
村役場を退職し、地域おこしの拠点として開店
高市さんは旧柳田村役場に約24年間勤務し、地域おこしの一環としてブルーベリーの特産品化に注力。退職後の1994年、珠洲市の古民家を移築改修し「夢一輪館」を開いた。店名には「生きている間に夢を一輪咲かせる場所にしたい」との願いが込められている。福井県でのそば打ち体験がきっかけで手打ちそばの提供を始め、能登の食材にこだわった料理を提供している。
地震発生時、猫に餌を与えていて遭遇
2024年1月1日、高市さんは店に住み着いた猫に餌を与えるために店を訪れていた。餌を与え終えて車に乗ろうとした瞬間、激しい揺れに襲われた。2度の大きな揺れの後、自宅に戻ろうとしたが、目の前の道路は陥没して通行できず、迂回して何とか帰宅した。自宅はもぬけの殻で家族の姿はなく、停電で真っ暗な中、不安な夜を過ごした。電話も通じず、道路も寸断される中、翌日になって避難所の柳田小学校体育館で娘たちと再会。約2週間を体育館で過ごし、ほとんど眠れない日々が続いた。
店の損壊と再建への道のり
地震発生から2週間後に電気が復旧したとの情報を得て自宅に戻った高市さん。店を確認すると、土地が沈下し、縁側が大きく損傷。2階のガラス戸も落下して割れていた。一部損壊と認定されたため、自力での修繕を余儀なくされた。そんな中、村職員時代からの付き合いがある新潟県や福井県など全国の仲間が支援の手を差し伸べ、修繕作業を進めた。「多くの人の協力でこの店が成り立っている。歯を食いしばって恩返しをするためにやらないと」と高市さんは語る。
30年以上続けるそば打ちへのこだわり
高市さんは毎朝8時からそばを打つのが日課だ。「思い込んだら徹底的に行う性格」で、店を開いてから試作を重ね、お客さんの反応を見ながら納得のいく味を追求してきた。長野県戸隠のそば粉を使うようになってから「自分はこんなそばを打ちたかったんだ」と実感したという。
災害時こそ力を合わせ、地域に貢献
避難所生活では、地域から離れる人々を見て寂しさを感じた。能登の観光地は地震で大きな被害を受けたが、「お互いに手を携え、今後ここで生きる人が真剣に努力しなければならない」と高市さんは強調する。これまでの恩返しのためにも、強い決意で店を続けていく。(城戸口瑞花)



