埼玉県と伊藤園、狭山丘陵で茶の新品種「彩の女神」「彩の糸」を共同開発、来春に苗木販売へ
埼玉県と伊藤園が茶の新品種を共同開発、来春苗木販売

埼玉県茶業研究所(入間市)と大手飲料メーカー「伊藤園」(東京)は、全国有数の茶産地として知られる県西部の狭山丘陵において、茶の新品種「彩の女神」と「彩の糸」を研究開発した。伊藤園は来春にも苗木の流通を開始し、全国の茶産地への普及を目指す。将来的には同社の看板ブランド「お~いお茶」の原料として活用することも視野に入れている。

新品種の特徴

2品種は5月中旬に収穫期を迎える「晩生品種」に分類される。「彩の女神」は収量性が高く、濃緑でまろやかな味わいが特徴。「彩の糸」は病害虫への強さを備えており、栽培の安定性が期待される。

県内では狭山市、入間市、所沢市など県西部の狭山丘陵を中心に茶栽培が盛んで、「狭山茶」として親しまれている。研究所によると、県内の茶産地は他の産地に比べ冷涼な気候が特徴で、晩生品種の育成に適しているという。

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開発の背景

一方、伊藤園の契約農家は温暖な九州地方に多く、4月頃に収穫する「早生品種」や5月上旬までの「中生品種」に生産時期が集中していた。このため、品質を重視すれば工場の処理能力が逼迫し、処理能力を優先すると早摘みや遅摘みとなって収量や味わいに影響が出る課題があった。

収穫時期を分散し、安定的な原料確保につなげようと晩生品種を探す中、同社は狭山丘陵に着目した。県側も、新品種を通じた狭山茶の知名度向上につながると期待し、2021年に共同育成が始まった。

役割分担と今後の展望

伊藤園は主にドリンク向けの品質評価や県外産地への適応力調査を行い、研究所は茶の育成や煎茶向けの品質評価などを担った。両者は昨年12月、農林水産省に品種登録を出願し、今年4月に「出願公表」となった。農水省の現地審査を経て本格的な生産体制が整う見込みだ。

品種の正式登録は数年後になる見込みだが、伊藤園は来春から希望する県内農家や同社契約農家に苗木の販売を始める予定だ。収穫量が増えれば、全国の茶産地への展開も目指す。

茶業界の現状と期待

農水省によると、県内の茶生産量は増加傾向にある。荒茶の県内生産量は昨年921トンで、24年の838トンから約1割増えた。一方、研究所で新品種の開発を担当した高橋淳さん(54)は「後継者不足に悩む農家の声も聞いており、茶業界の先行きには不安もある」と話し、「狭山茶のさらなる魅力向上に火を付ける存在になってほしい」と新品種に期待を寄せている。

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