作風様々な現代ホラー集評「こわいものがうつる」が描く恐怖の多様性
作風様々な現代ホラー集評「こわいものがうつる」

令和のホラーブームの只中にある。毎月のように新刊が並び、新たな書き手が次々と登場する。ホラー好きとしては歓迎すべき状況だが、どこから手を伸ばせばよいのか戸惑う読者も多いだろう。現在のホラー小説が包み込む領域は驚くほど広い。まずは、その地図が欲しくなる。

その意味で、本書『こわいものがうつる』は格好の一冊だ。ホラー界を牽引する上條一輝と芦花公園に、近年登場した四人の作家を加えたアンソロジーである。全作品を「感染する恐怖」というテーマが貫きながら、現在のホラーの射程の広さを鮮やかに映し出している。モキュメンタリー(フィクションのドキュメンタリー)から正統派のホラー小説まで。ポップなエンターテインメントもあれば、静かな余韻を残す作品もある。グロテスクさの濃淡も大きく、舞台も学校、警察、地方、都市とさまざまだ。

中には苦手に感じる作品もあるかもしれない。しかし同時に、「これが読みたかった」という一編にも必ず出会えるはずだ。筆者は、どこか美しさを湛えながら、最後には呪いが雪崩のように押し寄せる、皮肉屋文庫「死角の家」が頭から離れない。復讐心というのは、確かに静かで激しいものだ。狐歪野ツッコが自身の日記として書いた「あなあなた」の、最初から追い詰められている筆者自身の描写も印象的である。

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一方、幻冬舎文庫から『呪いの☒☒』(858円)という新刊も出ている。上條と芦花公園に加え、三津田信三、澤村伊智、背筋、北沢陶と、現代ホラーの主力による書き下ろしだ。興味深いのは、そのうち三編が、おそらく偶然にも日記や書物といった「書かれたもの」の呪いを扱っていることである。書き手自身の怨念まで滲み出てくるように思える。モキュメンタリーではない背筋作品が読めるのも嬉しい。

「酷暑日」なる言葉まで生まれた日本の夏は、今年も蒸し暑く、そして忌まわしいものになるのだろう。その夏を誰と過ごすか。この二冊を読みながら考えてみてはいかがだろうか。(1760円)

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