「はい、それでは始めますね。少しちくっとしますよ」。看護師の声に、いつものように体が硬直する。「指先にしびれなどはありませんか」「大丈夫です」と短く答える。現在、私は献血ルームで採血を受けている。
以前は献血バスを利用していたが、ある時、スタッフから「献血ルームもありますので、よろしければご利用ください」と勧められたのがきっかけで、以降は献血ルームを利用するようになった。インターネットで予約すれば待ち時間はほぼなく、採血中もタブレットでネットが使えるため、時間を持て余すことはない。
やがて「はい、終了です。体調に変化はありませんか」「大丈夫です」と答え、受付へ戻る。受付の女性から「本日はありがとうございました。次回のご予約はいかがなさいますか」と尋ねられ、私が返答に迷っていると、画面を確認した女性が気づき、「あっ、そういうことだったのですね。最後までご協力いただき、本当にありがとうございました」と深々と頭を下げた。
通算78回。その大半が全血献血だったため、回数としては多い方ではないが、私の最後の献血が終わった。もう献血したくてもできないのかと寂しさを覚えつつ、再び訪れることのない献血ルームを後にした。
私は4月、70歳の誕生日を迎えた。
(大堀一男・70歳、横浜市中区)



