5月10日は母の日。街のあちこちにカーネーションがあふれ、ラジオをつければお母さんの話題で持ちきり。ほほえましい気持ちと同時に、軽いため息が出る。40年前の母の日を思い出すからだ。
社会人1年生の母の日
社会人1年生だった私は、新しい環境に必死で、頭の中は仕事と対人関係でいっぱい。日常を顧みる余裕などまったくなかった。5月のある月曜日の朝、いつになく不機嫌な母を見て、あっ!と気づいた。昨日は母の日だったのだ。
たまの休日で一日中家でゴロゴロしていた私は、母の日をすっかり忘れていた。「何もプレゼントがなくてごめんね」とご機嫌をとったが、記念日好きでプレゼントが大好きな母は眉間にシワを寄せたまま。子供じゃあるまいし、プレゼントがもらえなかったくらいでそんなにふくれなくても…と内心あきれた。
最後のプレゼント
仕事帰りにデパートでスカーフを買って母に渡すと、母はきまり悪そうに小さく笑った。結局それが最後の母の日のプレゼントとなった。まもなく母は急逝し、わが家から記念日がひとつ減った。
毎年母の日が巡ってくるたびに、あの最後のちょっと気まずい空気の母子のやりとりと、母の複雑そうな笑い顔がよみがえる。
住吉美和子(63) 大阪府吹田市



