アガサ・クリスティの作品をデザイン史から読み解く新刊
「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの人生は、広い意味でのデザインの歴史そのものだ――そう語るのは、モダニズム時代を中心とするデザイン史研究の第一人者である著者・菅靖子氏。新刊『ポアロの部屋はなぜモダン? アガサ・クリスティで読み解く20世紀デザイン史』(彩流社)は、クリスティ作品に散りばめられたモダニズムの要素を丹念に追い、彼女の創作の秘密に迫る。
クリスティ作品に息づくモダニズム
1920年代から旺盛な執筆活動を始めたクリスティ。彼女の作品には、同時代に本格化したモダニズム芸術が随所に現れている。それは名探偵エルキュール・ポアロやミス・マープルが登場する物語の舞台設定だけでなく、小説のカバーデザイン、さらにクリスティ自身の邸宅や趣味にも反映されている。著者は、クリスティが自動車や電話機、カメラといった最新機器にすぐ飛びつく好奇心の塊だったと指摘。その好奇心が、数々の名作に新鮮な息吹を与えたという。
ポアロの部屋とヘイスティングスの車
テレビシリーズ「名探偵ポワロ」を愛する読者なら、ポアロが住むモダンなマンションや、車好きのヘイスティングス大尉の姿を思い浮かべるだろう。こうした細部にも、クリスティのデザインへのこだわりが表れている。また、クリスティは作品のカバーデザインにも強いこだわりを持ち、出版社とたびたび衝突したというエピソードも紹介。知られざる「女王」の意外な一面を余すところなく伝える内容は、ファン必読の一冊だ。
本書は2530円(税別)。歴史学者・君塚直隆氏(駒沢大学教授)が、その魅力を熱く語る書評を寄せている。君塚氏はイギリス政治外交史が専門で、サントリー学芸賞を受賞した『立憲君主制の現在』などの著書がある。



