確かな技術、冷酷な戦略…井上尚弥に挑む中谷潤人の強さの秘密②
確かな技術、冷酷な戦略…中谷潤人の強さの秘密②

スポーツ 確かな技術、冷酷な戦略、そして… 井上尚弥に挑む中谷潤人、対戦選手が語る強さの秘密② 2026年5月1日 10時30分 (5月1日 10時38分更新) 【連載】質実剛拳 中谷潤人 井上尚弥に挑む

ボクシングの元世界バンタム級2団体統一王者の中谷潤人(M・T、三重県東員町出身)が5月2日、世界スーパーバンタム級主要4団体統一王者の井上尚弥(大橋)に挑む。中学卒業後に渡米してプロの道を目指したたたき上げで、飾らない言動も印象的なボクサー。多彩なパンチに勝利への執念を備え、世紀の一戦に臨むプロ32戦全勝(24KO)の28歳の強さとは。過去に対戦した選手の証言をもとに、2回に分けて紹介する。(永井響太)

(上)多彩かつ視界外から現れる拳 井上尚弥に挑む中谷潤人、対戦選手が語る強さの秘密①
(下)確かな技術、冷酷な戦略、そして… 井上尚弥に挑む中谷潤人、対戦選手が語る強さの秘密②(この記事)

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昨年6月、世界バンタム級王座統一戦で、西田凌佑(右)を攻める中谷潤人=有明コロシアムで

中学卒業後に単身渡米してボクシングを学び、帰国後の17歳でプロデビューした中谷潤人。米国仕込みの技術を、元世界ボクシング協会(WBA)フライ級王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)は体感した。

2017年8月、日本ユース王座決定トーナメントのフライ級決勝戦で対戦した。低い体勢から頭をあご付近に付けられた。一度だけでなく、何度も。「顔の下からくるから、体が浮いてしまう」。上体が起きれば、空いた懐に被弾するリスクが生まれ、自分がパンチを打つ際には下半身から力を伝えられなくなる。

日本のジムで手ほどきを受けてきた選手であれば、相手にパンチを当てることを最優先に考える。自身の頭を相手の頭に意図的にぶつければ、「バッティング」の反則になる。ゆえに、ユーリ阿久井は「そんな発想がない。意図せずに頭を付ける人はいるかもしれないが、徹底的にやってくる人はいない。後から考えれば、やりづらさはあった」。バッティングにならないように、かつ、相手が嫌がるように頭を付ける。接近戦の奥深さを思い知らされた。

中谷からすれば、勝つために徹した戦略だろう。元国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級王者の西田凌佑(六島)も「予想外」と脱帽するほど徹底した作戦を遂行され、プロ11戦目で初の敗戦に追い込まれた。

昨年6月、バンタム級の世界2団体王座統一戦。アウトボクシングに秀でる西田は、試合開始のゴング直後から、中谷に接近戦を仕掛けられた。4、5回あたりで、右肩の痛みに気づく。左フックを打ち込む中谷の視線は、自身の右肩に向けられていた。「狙われている」。練習してきた左カウンターも、右肩に痛みがあるためタイミングが取れない。手数は減った。6回終了後、陣営は右肩の脱臼で棄権を決めた。

後日、中谷の会見内容を聞いた西田は「相手の肩を壊すことをイメージして、作戦の中に入れていたみたい」と明かした。映像を見返すと、1回から右肩を狙われていた。ダメージは蓄積し、異変を察知してもなお、弱みを突かれ続けた。中谷の戦略に翻弄(ほんろう)された一戦だった。

中谷を評するなら、どんなボクサーか。その問いに、ユーリ阿久井は「冷酷な超絶テクニシャン」と答えた。相手の良さを消し、嫌がることを徹底できる。ボクシングの鉄則をどこまで貫けるか。リングで情けはいらない。「そこまでちゅうちょなくいけるんだと。それで勝ってニコニコしている。半端ない」とうなる。

まもなくゴングが鳴る、無敗同士の決戦。戦前の予想は井上尚弥の防衛が多くを占めそう。挑戦者の勝利に対する執念が、下馬評を覆す。

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