錦織圭引退へ、遊び心と勝負強さの軌跡 4大大会優勝届かずも
錦織圭引退へ、遊び心と勝負強さの軌跡

日本男子テニスの歴史を塗り替え、数々の記録を打ち立ててきた錦織圭(ユニクロ)が、ラケットを置く決断を下した。キャリア晩年は、まるで連鎖反応のように全身の様々な箇所を痛みが襲い続けた。

引退決断の背景

「けがを理由にコートを去りたくない」と明かし、懸命に自らを鼓舞し続けてきた36歳。しかし、この春、ついに決断の時が訪れた。世界ランキングは464位(4月20日時点)で、この地位では四大大会の予選出場すら叶わない。

絶頂期だった2015年1月、オーストラリア・メルボルンで父・清志さんと交わした会話を思い出す。全豪オープン会場での雑談で、清志さんは何気なくこう言った。「テニスはリアルだから好きなんだよね。ランキングの仕組みがあって。シンプルで冷徹だから」。当時25歳だった錦織は、前年の全米オープン準優勝などで世界5位にまで駆け上がっていた。

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テニスにおいて、ランキングこそが全てである。清志さんの言葉には、そんな厳しい現実がにじむ。どんなビッグネームでも、ランキングが下がれば四大大会に出場するのは難しい。主催者推薦枠で一時的に出場できても、晴れ舞台に立つ権利をいずれ失う。プロ野球のように引退表明したスターが代打で登場し、大観衆の拍手を浴びながら最後の花道を飾る光景は、テニスではなかなか実現しない。

「錦織劇場」の魅力

四大大会デビューとなった2008年ウィンブルドン選手権から錦織の取材を続けてきた筆者が感じるのは、見ていて飽きない遊び心あふれるプレーだ。日本時間では深夜や未明となる欧米での試合でも、寝落ちせずにテレビ観戦を楽しめた視聴者は多いだろう。

錦織自身も「力任せにバンバン打ってもつまらない。相手を翻弄してというか、少し味付けをしてポイントを取ることで、お客さんを喜ばせたい」と語っていた。身長178センチは男子テニスでは小柄だが、牛若丸が武蔵坊弁慶を打ち負かすような痛快さが錦織のテニスにはあった。さらに「錦織劇場」と呼ばれるそのプレースタイルは、多くのファンを魅了し続けた。

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