巨大噴火を制御する日は来るか?産総研研究員が挑む「ラスボス級災害」への大胆構想
巨大噴火を制御する日は来るか?産総研研究員の大胆構想

発生すれば日本列島全体が壊滅的な被害を受ける巨大噴火を制御する研究を、産業技術総合研究所(産総研)の研究員が進めている。自然の巨大な力に立ち向かう無謀な構想にも思えるが、うまくいけば噴火を抑えたうえで、熱エネルギーやマグマに含まれる貴金属資源の活用も可能だという。地球最悪の「ラスボス級の災害」ともいえる巨大噴火を、人間が制御できる日は来るのか。

列島を覆いつくす「ラスボス級の災害」

巨大噴火は、大量のマグマが一気に噴き出し、火山噴火の中でもとりわけ規模が大きい。広い範囲に火砕流が押し寄せ、大量の火山灰が日本列島を広く覆い尽くす。地下から大量のマグマが抜け出ることで、その上の地面が陥没してカルデラができる。火山灰や火山ガスが成層圏まで達し、太陽光を遮ることで地球規模の寒冷化が起き、長期間にわたる異常気象を引き起こす。カルデラ噴火、破局噴火とも呼ばれる。

日本では1万年に1回ほど起きており、100年以内に発生する確率が約1%とする試算がある。中でも、阿蘇カルデラや鹿児島湾の姶良カルデラなどで繰り返されてきた。最も新しい巨大噴火は、7300年前に薩摩半島南方沖の鬼界カルデラで起きた。火砕流は海面上を走って九州南部にも達し、火山灰は日本列島を覆った。この噴火で南九州の縄文文化が壊滅したと指摘されている。3万年前の姶良カルデラの噴火では、日本列島に広く降灰した。

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壮大な「ガス抜き」で抑える構想

その噴火を制御しようとする研究に火山学者らも注目し、24日から千葉市で始まった地球科学系の学会でセッションが設けられた。27日の「噴火・地熱・鉱床のあいだ」と題したセッションで、産総研の宮城磯治主任研究員が「巨大噴火の予防的防災」のタイトルで講演する。

宮城さんの構想は、巨大噴火を起こすマグマだまりのガス抜きをして噴火を抑え、熱エネルギーを利用するとともに、火山ガスに含まれる貴金属資源を活用するというものだ。人々を救うために火山を人工的に制御するという発想は、一見SFのように思えるが、実際に研究が進められている。

この構想の核心は、マグマだまりに蓄積された圧力を人為的に解放することにある。地下深くのマグマだまりは、時間とともに圧力が高まり、やがて限界に達すると噴火に至る。そこで、ボーリング孔を掘削してガスや熱水を抜き取ることで、圧力を低下させ噴火を未然に防ごうという試みだ。同時に、放出される熱エネルギーを地熱発電に利用し、マグマに含まれる金や銀などの貴金属を回収する経済的なメリットも期待されている。

しかし、実現には多くの課題がある。まず、マグマだまりの正確な位置や状態を把握する技術が必要だ。また、深部掘削には高温高圧に耐える技術が求められ、大規模な工事に伴う環境影響やコストの問題もある。さらに、人為的に圧力を解放することで、かえって噴火を誘発するリスクも否定できない。こうした課題を一つ一つ克服していく必要がある。

宮城研究員は、「噴火を完全に防ぐことは難しいかもしれないが、その規模を小さくしたり、時期を遅らせたりすることは可能かもしれない」と話す。また、火山学者の中には「噴火制御は夢物語だが、研究を進めることで火山の理解が深まり、防災に役立つ」と評価する声もある。

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巨大噴火は、人類が経験したことのない規模の災害であり、その発生確率は低いものの、もし起きれば計り知れない被害をもたらす。だからこそ、予防的な取り組みが重要だ。産総研の研究は、まだ初期段階だが、将来的に噴火を制御する技術が確立されれば、日本のみならず世界中の火山地域にとって大きな福音となるだろう。地球最悪の災害に立ち向かう挑戦は、始まったばかりである。