JR宇都宮線断線事故、複数の人為的ミスが連鎖的に発生
JR東日本は2026年2月17日、約19万人に影響を及ぼした宇都宮線の大規模停電事故について、詳細な原因調査結果を公表しました。その内容によると、トロリ線の交換場所を取り違えた誤作業と、摩耗を示す検査画像を二度にわたって見逃した見落としなど、複数の人為的ミスが連鎖的に発生していたことが明らかになりました。
摩耗が限界値を大幅に下回る異常状態
事故は2月8日深夜、茨城県の古河駅付近で発生。電車に電気を供給するトロリ線が断線し、広範囲にわたる停電を引き起こしました。調査の結果、断線したトロリ線の直径はわずか4.1ミリにまで摩耗していたことが判明しました。
通常、新品のトロリ線は直径15.3ミリであり、8.7ミリを下回ると交換対象となります。さらに、限界値とされる7.7ミリを下回る前に交換が必要とされています。しかし、今回のケースでは限界値を大幅に下回る異常な状態が放置されていたのです。
目視点検からモニタリング検査への移行時に生じたミス
JR東日本の説明によれば、2023年4月の目視点検において、現場のトロリ線が直径7.9ミリにまで摩耗していることを確認していました。約3週間後、交換作業が実施されましたが、誤って平行する別のトロリ線を張り替えるという取り違えが発生。これが最初の重大な人為的ミスでした。
さらに、2024年4月からは、検測車が撮影したトロリ線の画像とレーザー測定による直径データを用いて、担当者が摩耗状況を判断するモニタリング検査を導入。しかし、この新しい検査体制下でも、はっきりと摩耗が示されていた画像を二度にわたって見逃すというミスが重なりました。
JR東日本、再発防止策を表明
一連の調査結果を受けて、JR東日本は「今後は画像を複数人で確認するとともに、モニタリングの検査結果から摩耗箇所を自動検出できるよう改善していく」と再発防止策を表明しました。
この事故は、首都圏のJR線で相次ぐ電気トラブルの一環として位置づけられます。2026年1月以降、山手線や京浜東北線、常磐線などで同様の問題が発生しており、うち山手線と京浜東北線の停電も人為的ミスが原因と判明。喜勢陽一社長は「経営の根幹に関わる事態」として謝罪しています。
点検体制の抜本的見直しが急務に
今回の事故は、単一のミスではなく、複数の工程で連鎖的に失敗が生じた複合的事例として注目されます。目視点検から機器によるモニタリング検査への移行過程において、適切なチェック体制が機能していなかった実態が浮き彫りとなりました。
鉄道網の安全確保において、人為的ミスを如何に防止するかが重大な課題として突きつけられています。JR東日本は、技術的改善とともに、作業プロセス全体の見直しを迫られることになりそうです。