イラン情勢の混迷が2月末から続いているにもかかわらず、「有事の金」とも呼ばれる金(ゴールド)の価格は落ち着いている。国内の金1グラムの店頭小売価格が3月2日に史上最高値の3万円超となったが、最近は2万5000円台で推移する。楽天証券経済研究所の吉田哲・コモディティアナリストに、複雑に絡み合う価格決定の要因を読み解いてもらった。
金高騰の裏に「三つの理由」
米国とイスラエルによるイラン攻撃の直後の3月2日、国内指標とされる田中貴金属工業の店頭小売価格(税込み)は最高値の3万0305円を記録した。しかし、その後3週間ほどで2万4000円台まで急落した。吉田氏は「世界の指標である米ドル建ての金価格は、基軸通貨であるドルの影響を受ける。ドル高になれば下がりドル安になれば上がるのが基本だ」と説明する。
3月中旬は原油高による米国のインフレ懸念が高まったタイミングだった。利下げを続けるとみられていた米国が、インフレ退治のために逆に利上げにすら動くのではとの見方が広がった。利下げ観測の後退はドル高につながり、金にとっては大きな下落圧力になった。
有事はドルか金か
主要な通貨に対する総合的なドルの強さを示す「ドル指数」も高い水準だった。戦争や経済危機のときに避難先として基軸通貨のドルを買う「有事のドル買い」も、ドル高・金安に影響した。
安全資産とされる金も「有事の金買い」と言われるが、その見方は過去のものになったのか。吉田氏は「そうではない」と否定する。「有事の金買いは依然として存在するが、今回はドル買いと金買いがせめぎ合っている。さらに、利上げ観測という金にとって逆風の要因も加わり、複雑な構図になっている」と分析する。
金価格を決める三つの要因――地政学リスク、ドル相場、金利動向が絡み合い、現在はドル高と金利上昇観測が金価格を抑えている。しかし、イラン情勢がさらに悪化すれば、再び金買いが強まる可能性もある。市場は今後の展開を注視している。



