不可能と言われた「のぞみ毎時13本」実現の舞台裏 AI時代でも現役「スジ屋」が明かす鉄道ダイヤ作りの極意
のぞみ毎時13本実現の舞台裏 AI時代でも現役「スジ屋」の極意

不可能と言われた「のぞみ毎時13本」が実現した舞台裏

過密なダイヤで知られる東海道新幹線の「のぞみ」は、2020年に1時間あたり最大12本の運行が可能なダイヤに改定され、それ以上の本数増加は不可能とされていた。しかし、JR東海は2026年3月14日のダイヤ改正で、ついに毎時最大13本の運行を実現させた。この驚異的な増発は、どのような工夫と努力によって成し遂げられたのだろうか。

満席続きで迫られた増発の必要性

東京、品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪を結ぶ「のぞみ」は、停車駅が少なく区間最速の列車として人気を博している。JR東海・新幹線鉄道事業本部輸送課の小川陽久担当部長は、「新型コロナウイルス禍が終わってから、3大ピークに限らず普段の3連休でも『のぞみ』の満席が続くようになり、約1年半前から13本ダイヤの本格的な検討を始めました」と語る。特に2025年11月22日は終日満席が続き、正午近くになってようやくグリーン車に空席が生じるほどだったという。

実際、記者が東京駅を利用した際には、のぞみ自由席の乗車位置にあたる新幹線ホームの品川寄りに乗客があふれ、身動きが難しい状況を目の当たりにした。このような需要の高まりを受け、JR東海の丹羽俊介社長は「いろいろ知恵を絞りながら工夫を凝らしていく必要がある」と述べ、翌月には13本化を正式に発表した。

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難題だった「つなぎ目」の調整

従来のダイヤは、東京発の時刻を毎時0分、9分、12分などと固定した「パターンダイヤ」を1時間ごとに繰り返す形で編成されていた。今回の改正では、午前7時から10時台に東京発13本、午後2時から5時台に新大阪発13本とする新たなパターンダイヤを作成し、それ以外の時間帯の12本パターンと組み合わせた。

小川担当部長は「13本の午前10時台から12本の同11時台へ切り替わる時点では、多くの列車が運転中です。パターンとパターンを縫い合わせる『つなぎ目』をどうするかが最大の難題でした」と明かす。停車駅が多い「ひかり」や各駅停車の「こだま」も走行する飽和状態の路線に、13本目を追加するのは至難の業だった。

緻密な手作業による調整の数々

輸送課の秋山大器課長代理によると、小田原では「こだま」の「のぞみ」通過待ちを1本から2本に増やし、後続の「のぞみ」の東京発時刻を3分遅らせることで、「ひかり」や「こだま」をスムーズに追い抜きながら新大阪までの所要時間を3分短縮した。これにより、所要時間が2時間27分に改善された。

さらに、新大阪では山陽新幹線への直通列車を増やし、新大阪止まりの列車がホームを占有する時間を短縮する工夫も施された。これらの調整が積み重なることで、13本化が可能になったという。

AI時代でも現役「スジ屋」の手作業

鉄道会社でダイヤを作る担当者は、グラフの縦軸に駅を並べ、横軸に時刻をとり、定規と鉛筆で列車を示す斜線を引くことから「スジ屋」と呼ばれてきた。この伝統的な作業は、現代でも機械化されていない。秋山課長代理は「いえいえ、ダイヤは進化しても手作業です」と語り、今でも使用する定規を見せてくれた。小川担当部長も「人工知能(AI)は使っていません」と断言する。

一方、乗客の需要予測にはインターネットを駆使し、イベント情報などを細かく収集して時間ごとに人数を推定している。「12本」「13本」は定期列車と臨時列車を合わせた本数であり、実際の運行本数は需要予測に応じて調整されている。

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航空機との競争と今後の展望

利便性が高まれば需要はさらに膨らむ可能性があり、スジ屋の悩みは尽きない。航空機との競争が激化する中、東海道新幹線はより効率的な運行を目指してダイヤ改正を重ねている。熟練のスジ屋による手作業の緻密さが、不可能と言われた「のぞみ毎時13本」を実現させたのである。