地域FM局の看板番組が歴史に幕 ジュビロ磐田生中継が6月で終了
浜松市近隣をカバーする地域FM局「FMHaro!」(浜松エフエム放送)は、サッカーJ2ジュビロ磐田の全試合を実況生中継している看板番組「ジュビロ・ライブ・スペシャル」を2026年6月で終了することを決定した。磐田の親会社であるヤマハ発動機とヤマハがスポンサーを降板したため、採算を見通せなくなったことが主な理由だ。
約30年の歴史に終止符 スポンサー撤退で継続困難に
ヤマハ発動機とヤマハは3月で同番組と平日放送の「ジュビロ・デイリー・ニュース」のスポンサーを降板。デイリー・ニュースは既に3月末で終了しており、ライブ・スペシャルも開催中の明治安田J2・J3百年構想リーグが閉幕する6月まで赤字で放送を続けることになる。
同局の番組担当、加藤達郎さん(52)は「約30年にわたるヤマハ発動機さんの後押しがあって番組が成り立っていた。ジュビロが苦しいときこそ応援したかったので、残念です」と心情を明かす。
1998年開始の歴史的番組 敵地乗り込みも全国初
初放送は1998年11月3日。磐田が好敵手の鹿島と敵地・茨城県鹿嶋市で対戦した一戦で、試合は0―1で磐田が敗れたものの、地域FM局が敵地に乗り込む全国初の試みとして記録された。
地元AM局が磐田の本拠地ヤマハスタジアム(磐田市)での放送を撤退したのを機に、2009年から本拠地・敵地戦の全試合を生中継するようになった。磐田に肩入れし、聴取者と歓喜を分かち合う実況を身上とし、「ゴォーール」と絶叫するのは磐田の得点だけという特徴的なスタイルで親しまれてきた。
唯一の中立実況は東日本大震災時
ただし、一度だけ中立に実況した日がある。東日本大震災があった2011年の磐田―仙台戦(ヤマハスタジアム)で、仙台市の地域FM局からの依頼により両地域で同時放送した。現在ではJリーグの地元チームの全試合を中継する全国唯一のラジオ番組となっていた。
音声だけの実況が生む独特の一体感
音声だけのスポーツ実況は聴取者の想像力をかき立て、メールなどを介したやりとりが共感を呼び、独特の一体感を生み出してきた。スマートフォンのアプリを通じて全国で聞けるようになり、同局の聴取率トップを誇る人気番組だった。
「費用対効果」を理由にスポンサー撤退
しかし今年1月、ヤマハ発動機側から「費用対効果」を理由に広告費の出資中止を伝えられ、ヤマハも足並みをそろえるようにスポンサーを降りた。ヤマハ発動機は「会社が減収減益の中、全社的に委託事業などを見直している。事業の選択と集中、費用対効果を踏まえての判断」と説明している。
ヤマハ発動機の業績は「トランプ関税」の影響を受けて悪化。2025年12月期連結決算では黒字を確保したものの、純利益は前期比85・1%減の161億円にとどまり、収益改善策を講じている。ヤマハも中国市場の低迷が業績に響いている状況だ。
スタッフ削減でも続けてきた番組運営
同番組は放送開始当初から社用車1台にスタッフと機材を詰め込み、敵地に移動していた。新型コロナウイルス禍以降は広告費縮小に伴い、スタッフを5人から2人に削減。実況アナウンサーとディレクターだけで番組を切り盛りしてきた。
加藤さんは震災、災害時に底力を発揮するラジオの必要性を強調し「有事の情報収集にリスナーとのつながりは欠かせない。最も多くの人に聞いてもらえていた番組がなくなるのはつらい」と語る。
新スポンサー獲得に奔走もめど立たず
8月開幕のJ2リーグ戦に向け、新たなスポンサー獲得に奔走しているが、継続のめどは立っていない。約30年にわたる歴史を持つ地域密着型のスポーツ中継番組が、経済的事情により幕を下ろすことになる。



