トキ本州初放鳥、能登の被災地に希望の翼
トキ本州初放鳥、能登の被災地に希望の翼

全国の空に朱鷺色の翼を取り戻そうとする試みが新たな段階を迎えた。人と野生生物の共生はどうあるべきか、考えるきっかけにしたい。

本州初の放鳥、能登半島で実施

野生への復帰に向けて特別天然記念物のトキ8羽が、本州では初めて能登半島の石川県羽咋市に放たれた。自然環境下での安定的な繁殖を目指し、今後は隣接する中能登町や島根県出雲市でも放鳥が予定されている。

トキ減少の歴史

トキは明治初期まで全国各地で見られたが、羽毛を目的に乱獲されたり、農薬散布によって餌となるドジョウが減少したりして、次第に姿を消していった。新潟県の佐渡島で保護された野生最後の1羽が2003年に死んだことで、日本産は絶滅した。

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復活への取り組み

国はトキを復活させようと、中国から提供されたペアによる人工繁殖に取り組み、佐渡島で放鳥を重ねてきた。今では野外で500羽ほどが観察されるまでに増えた。本格的な野生復帰への最初の段階はクリアしたといえる。

能登の被災地におけるシンボル

能登は本州最後のトキの生息地だ。2024年には地震と豪雨災害があり、「トキを復興のシンボルに」という地元の思いは強かった。住民らは農薬を減らし、水田に餌のドジョウが集まる場所を整備するなど、準備を進めてきた。

トキが空を舞う里山は日本の原風景とも言え、古来、人々の心情を豊かにしてきた。災害に打ちひしがれた能登の人々を元気づける存在になってほしい。

懸念される課題

本州での放鳥にこぎ着けたとはいえ、絶滅の危険性が高い状況に変わりはない。トキは警戒心が強く、人が近づくと驚いて餌をとれなくなる。特に繁殖時期には、人が巣に近づかないようにするなど、静かに見守りたい。

一方、トキの野生復帰を不安視する声もある。佐渡島の対岸にある5市町村と新潟県は、放鳥候補地に応募した後、申請を取り下げた。全国有数の米どころだけに、トキに稲を踏み荒らされることなどを懸念したという。北海道のタンチョウも一時は数が激減した。保全活動に力を注いだ結果、個体数が回復し、一転して農作物の被害などが顕在化するという状況も生まれた。

今後の展望

国は、トキの放鳥を進める理由と意義を十分に説明し、社会の理解を得ることが重要だ。トキの学名は「ニッポニア・ニッポン」で、かつては日本の豊かな自然を象徴する存在だった。トキが生息できる環境を守ることは、人が安心して生活できる地域づくりにもつながる。

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