雨の季節を目前に控え、広島県福山市は市内のため池の水位を遠隔で監視するシステムの運用を開始した。このシステムにより、水位データは専用ウェブサイトで即座に公開され、ため池の管理者は昼夜を問わず、決壊や氾濫の危険性を現場に出向くことなく把握できるようになる。これにより、住民の迅速な避難行動につなげることが期待されている。
システムの仕組み
システムは水位計と太陽光パネル付き通信ルーターで構成されている。ため池の底に向かって伸びる筒状の水位計の先端には水圧センサーが取り付けられており、水位の増減を検知すると、無線でルーターにデータを送信する仕組みだ。
福山市は、人的被害を及ぼす恐れがある防災重点ため池53か所にこのシステムを設置。さらに、災害時に現場への接近が困難な14か所には、現地の映像を確認できる監視カメラも追加で取り付けた。
ウェブサイトで情報公開
専用ウェブサイトは誰でも閲覧可能で、警戒水位や危険水位の目安とともに、現在および過去の水位がグラフで表示される。また、毎日正午に自動撮影された画像もアップロードされ、警戒水位を超えた場合は1時間ごとの撮影に切り替わる。
4月上旬には、同市坪生町の「西の谷新池」でシステムが報道陣に公開された。現場を確認した坪生学区町内会連合会の森岡二郎会長(72)は「最近は経験したことのない大雨が降ることもあり、必要な時に簡単に水位を把握できるので心強い。地域の人たちにサイトを知らせたい」と話した。
西日本豪雨の教訓
福山市内では2018年の西日本豪雨の際、駅家町でため池が決壊し、当時3歳の女児が亡くなる痛ましい災害が発生した。この教訓を踏まえ、広島県と福山市は必要性の低いため池を廃止する取り組みを進めてきた。市農林整備課によると、2019年度から2026年3月までの間に、管理者や周辺住民の同意を得て37か所のため池が廃止された。
しかし、昨年末時点で市内には1052か所の防災重点ため池が存在し、うち609か所は堤防の劣化や耐震性不足、雨水放流口の狭さなどから防災工事が必要と判定されている。今回システムを導入したのはこうしたため池であり、今年度中にはさらに53か所でシステムを設置する予定だ。
同課は「防災的な観点では農業利用のないため池は廃止した方がよいが、時間と費用がかかる。システムの活用や、管理者に日頃から水位を下げてもらうなどの防災対策も進めたい」としている。



