大井川鉄道(大鉄、静岡県島田市)は、井川線(25.5キロ)の運賃を大幅に引き上げ、乗車を旅行商品として事前予約制に変更する方針を固めた。現在、千頭(川根本町)-井川(静岡市葵区)間の大人料金は1340円だが、6月1日からはその2.6倍以上にあたる3500円とすることを想定している。
住民から「急すぎる」と反発
大鉄は4月中旬に地元の川根本町に値上げ計画を連絡したが、住民からは「急すぎる」「説明が不十分」と強い反発を受けた。大鉄は近く、改めて地域説明会を開催する方針だ。
井川線はダム湖に浮かぶ奥大井湖上駅など絶景スポットが人気で、観光利用が主となっている。過疎化の影響で沿線住民の利用は極めて少なく、過去15年間にわたり定期券の発行実績がない。大鉄の鳥塚亮社長はブログで「地域の足としての役割は終了している」と述べ、「乗ること自体が目的となる観光列車は、急峻な山岳地帯を走るため維持費もかさむ。世界的に見ても一般の交通とは異なる価格設定が必要」と理解を求めている。
新たな運賃体系の詳細
現在の井川線の運賃は大人160~1340円だが、6月からはパックツアー型の旅行商品として、1人1乗車3500円(小児半額)とする計画だ。急勾配に対応するため専用の歯車型車輪を備えた「アプト式」電気機関車に連結する「アプトいちしろ駅」や、湖上に浮かぶように見える世界的に有名な「奥大井湖上駅」では停車時間を設け、観光案内を実施する。
ただし、温泉客などの利便性を考慮し、1日5往復のうち上り(千頭方面)の始発と下り(井川方面)の最終列車のみ、従来運賃の普通乗車券で利用できる車両を残す。また、沿線住民の希望者には無料の乗車パス(2年間有効、手数料1000円)を発行する。
町の懸念と復旧工事の影響
川根本町によると、町が大鉄から値上げの正式な連絡を受けたのは4月14日。昨秋にも値上げの打診があったが、観光業者らの反発で一度断念した経緯がある。町の担当者は「値上げで観光客が減り、駅前の飲食店などへの影響が懸念される」と話す。
大鉄の大井川本線は2022年の台風で被災し、川根温泉笹間渡(島田市)-千頭間(19.5キロ)が不通となっている。現在、川根本町や県、島田市の支援を受け復旧工事が進められている。川根本町の住民からは「経営が厳しいのは理解できるが、値上げ幅が大きすぎる。公的支援を受けている以上、地元への丁寧な説明が不可欠だ」との声が上がっている。
関係者によると、こうした地元の反応を受け、6月からの値上げ実施は見送られる可能性もあるという。
井川線の歴史
井川線は1935年、大井川上流の開発に伴う資材運搬用として開通。現在は中部電力が保有し、大鉄が運営を受託している。



