男児遺棄事件でSNS上にデマ拡散 野生鳥獣処理施設が標的に
京都府南丹市で、行方不明となった小学生の男児(11)が遺体で発見された事件をめぐり、捜索が続いた約3週間の間に、SNS上で不確かな情報が広がった。特に、事件と無関係な野生鳥獣処理施設がデマの標的となり、生成AI「Grok」が偽情報を基にした要約投稿も確認された。虚偽情報は業務に支障を来すほど拡散し、専門家は事件への不安感情が背景にあると分析している。
施設を名指しした投稿が拡散 「全くの虚偽」と市担当者
事件と関連づけた投稿がX(旧ツイッター)上で広がり始めたのは、男児の安達結希さんが行方不明となってから20日目となる4月11日ごろから。遺体が山中で見つかる2日前のことだ。約1830万回表示された投稿では、「噂通り」と前置きしたうえで施設を名指しし、「施設で処理されてしまっていたら、遺体も証拠も出てこないだろう」「警察はそれをわかっていて、事務的に捜索だけしているということになる」と書き込まれていた。
さらに、死体遺棄容疑で逮捕された父親の優季容疑者(37)とその親族が「施設職員」とする別の投稿も拡散。これに対し、市の担当者は「全くの虚偽。デマです」と断言する。施設は地元の猟友会が運営しており、常駐職員はおらず、「施設職員」という肩書自体が「あり得ない」と説明。結希さんが行方不明となった3月23日以降、施設の出入りは身元がはっきりした関係者に限られ、無断使用の形跡もないという。
デマ投稿で業務に支障 問い合わせが相次ぐ
朝日新聞ニュースメディア開発部の分析によると、施設と事件を結びつけた投稿は、4月11日から遺体発見の13日までに171件確認され、表示が2千万回を超えた投稿もあった。拡散が始まると、事件との関係を問う電話が市にかかるようになり、担当者は「いきなり電話をしてきて、名乗りもせず、『おかしいですね』『親族いらっしゃいますか』と言ってくるユーチューバーのような人もいた」と話す。
職員たちは電話対応や記録、情報共有に追われ、通常業務に支障を来すほどだった。子どもの行方不明事案という性質もあり、SNS上の関心は高く、投稿数はかばん発見の3月29日や山中捜索の4月7日を起点に増加。遺体発見の13日は、それまでの最多投稿日の2.6倍を超えた。
根拠ない情報が相次ぐ 家族めぐる臆測も拡大
報道をなぞる投稿が多い中、家族について言及した投稿も目立った。特に父親の優季容疑者をめぐり、根拠のない情報が広がった。府警の発表では逮捕時は37歳だが、逮捕前には「父親は24歳」とするX投稿が多数拡散。外国籍と断定する投稿もあったが、府警幹部は取材で否定した。
犯罪をめぐる社会心理に詳しい原田隆之・筑波大教授は、子どもの行方不明情報に触れると、心配から不安や怒りがわくのが自然だと指摘。一方で、「その感情が行き場を失い、デマを生み出す一因となる」と背景を説明する。事件はSNS上の偽情報拡散の実態を浮き彫りにし、対策の必要性を訴えている。



