高速道路のサービスエリア(SA)で、ペットボトルに用を足して投棄する俗称「黄金のペットボトル」が社会問題となっている。取材により、ドライバーのモラルの問題だけでなく、運送業界の厳しい労務事情が背景にあることが浮き彫りになった。高速道路会社は対応に苦慮している。
清掃活動で約100本を回収
5月中旬、中日本高速道路(NEXCO中日本)は新東名高速の静岡SA上り線(静岡市葵区)で、問題を広く周知するため、県トラック協会と協力して初の清掃活動を実施した。この活動に記者も同行した。参加した約50人はトングを手に、腰ほどの高さの草やツタをかき分けながら、側溝なども含めて入念に清掃。30分間の活動で、約100本の「黄金のペットボトル」とみられるものが回収された。
同社によると、この問題は全国的に表面化しており、静岡SAでは5年ほど前から特に目立つようになった。グループ会社が行う日常的な清掃活動では、静岡SA内で1回に平均30~50本、多い時で100本が見つかるという。
背景にある運転手の多忙さ
背景には運転手の多忙さがあるとみられる。静岡SA内では、大型車の駐車スペースからトイレまでの距離が普通車と比べて遠く、一番遠い場所で約300メートルある。同社静岡保全・サービスセンターの清水智之さん(44)は「時間節約のために、やむを得ずペットボトルに用を足すのではないか」と推測する。
厚生労働省が定めるトラック運転者の労務基準では、連続運転時間は4時間以内とされ、運転時間内または直後に必ず30分以上の休憩を取ることが義務付けられている。県トラック協会青年部会の高取慶部会長は「時間内に長距離を走りたいという心理的プレッシャーが働いているのでは」と分析する。
法的罰則と業界の対策
路上投棄は廃棄物処理法違反に当たる可能性があり、5年以下の拘禁刑または1千万円以下の罰金、あるいはその両方という重い罰則が規定されている。わずかな時間も惜しんでの行為とも考えられるが、高取部会長は「路上投棄は許されない。運送会社側も簡易トイレを配布するなど、対策が求められる」と強調した。
清掃員の負担とリスク
回収して処理する側の負担も深刻だ。50代の女性清掃員によると、夏場は気温上昇でペットボトルが膨張し、最悪の場合は破裂する恐れがある。お茶や水など炭酸飲料以外のボトルは強度が低く、破裂の可能性がさらに高まる。分別のため人の手で開封作業を行うこともあり、暑さなどで中身が発酵し、強烈な臭いを放つという。
同センターの佐宗美代子副所長は「感染症の恐れもあり、処理する側の心理的負担は重い」と声を潜める。車通りの少ない場所で、袋に入った便が見つかることもあるという。まもなく酷暑を迎える中、清水さんは「清掃する身も苦痛を伴う。ごみは所定の場所に捨てて、ルールとマナーを重視してほしい」と強く訴えた。



