福岡県嘉麻市で4歳と3歳の姉妹が殺害され、母親(30)が殺人容疑で逮捕された事件。一家が生活していた「母子生活支援施設」とは何か、そしてDV加害者とされる内縁の夫(33)がどのようにして3年間も隠れて住み続けていたのか、その実態が明らかになってきた。
母子生活支援施設の役割と現状
母子生活支援施設は、家庭内暴力(DV)被害や経済的困難を抱える母子を受け入れる施設で、1997年の児童福祉法改正により「母子寮」から改称された。各世帯が独立した居室で生活し、こども家庭庁によると、2025年3月末時点で全国に約3千世帯が入所している。2022年度の調査では、入所理由の最多は「配偶者からの暴力」で50.3%、次いで「住宅事情」15.8%、経済的理由10.6%となっている。
一時保護のためのDVシェルターでは通信や外出に制限があることが多いのに対し、母子生活支援施設では通勤・通学を含む日常生活の回復を目指す。同庁の調査では、入所者の約6割が就業している。
事件の経緯
県警によると、水沼南帆子容疑者は施設からパートに通い、死亡した長女の二彩さん(4)と次女の三華さん(3)は保育園に通っていた。関係者は「毎日きちんと送り迎えをしていた」と話す。
しかし今年3月10日朝、二彩さんと三華さんが居室内で倒れているのを施設職員が発見。2人は搬送先の病院で死亡が確認された。水沼容疑者も自分の首を傷つけていたが命に別条はなく、県警は二彩さんの首を絞めて殺害した容疑で逮捕。容疑を認め、三華さんの殺害もほのめかしているという。
もう一人の住人:内縁の夫の潜伏
事件をきっかけに、もう一人の同居人の存在が発覚した。2児の実父でもある内縁の夫だ。事件当日も居室内にいたとされ、のちの取り調べに「目を覚ましたら3人が倒れていて、びっくりした」と説明したという。
県警は、けがをしていた水沼容疑者を放置し、さらに財布から現金を盗んで立ち去ったとして、保護責任者遺棄と窃盗の疑いで逮捕したが、4月23日に釈放された。
潜伏の経緯
水沼容疑者が施設に入所したのは2022年9月。内縁の夫からのDVがきっかけだった。けがに気づいた職場の同僚を通じて警察に通報があり、子どもとともに保護された。内縁の夫は傷害容疑で逮捕され、略式命令を受けた。
ところが内縁の夫は間もなく施設に来て、隠れて同居を始めたとみられる。その経緯の詳細が県警の捜査で徐々に明らかになってきた。水沼容疑者は料金未納で携帯電話を…(以下、有料記事の続きがあるが、ここでは省略)。
施設の死角と課題
DV被害者を支援するはずの施設で、加害者が長期間潜伏できた背景には、施設の管理体制の甘さや、入居者同士のプライバシー尊重が死角となった可能性がある。専門家は「施設側のチェック体制強化や、入居者間の見守りネットワーク構築が必要」と指摘する。
今回の事件は、母子生活支援施設の在り方に一石を投じている。DV被害者の安全確保と、施設機能のバランスが問われている。



