地域おこし協力隊員のうつ病訴訟が和解 市が活動内容の明確化とメンタルヘルス対策を約束
2026年4月15日、滋賀県長浜市に地域おこし協力隊として移住した女性がうつ病を発症したのは市の支援不足が原因だとして、約760万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪高等裁判所で和解しました。市側は解決金として40万円を支払うほか、今後は協力隊の活動内容を明確化し、隊員のメンタルヘルスに配慮することを約束しました。
活動内容が「自由に動いてもろて」と曖昧な指示
昨年9月の大津地方裁判所の一審判決によると、女性は2019年に3年間の活動期間を前提として「特産品づくり」を担当する協力隊員に採用されました。しかし活動中にうつ病を発症し、2021年2月に辞任に至っています。
訴訟において女性側は、市に対して活動内容の具体的な説明を求めても「自由に動いてもろて」といった曖昧な指示しか与えられず、市が適切な支援義務を怠ったと主張しました。これに対し一審判決は、協力隊の活動は隊員の裁量に委ねられる部分が大きく、雇用関係にない自治体には支援義務がないとして請求を退けていました。
和解内容と市の対応
和解調書では、長浜市が女性に40万円の解決金を支払うことが明記されています。さらに重要な点として、市は今後以下の取り組みを実施することで合意しました。
- 地域おこし協力隊の活動内容を具体的に明確化すること
- 隊員のメンタルヘルスに配慮した支援体制を整備すること
- 制度の適切な運用を通じて隊員と共に地域づくりを推進すること
市側は地裁段階から「隊員の活動内容を具体的に設定する義務はない」と争っていましたが、15日に発表した文書で和解に応じた理由を説明しています。それによると「係争を継続した場合、訴訟に要する時間や費用の負担が大きく、市政運営への影響も懸念されると判断した」とのことです。
地域おこし協力隊制度の課題と展望
この訴訟は、全国的に展開されている地域おこし協力隊制度における自治体の責任範囲と支援体制のあり方に重要な問いを投げかけました。隊員は多くの場合、都市部から地方に移住し、地域活性化の担い手として期待されていますが、活動内容が曖昧なまま放置されるケースや、精神的な負担に対するサポートが不十分な実態が浮き彫りになりました。
長浜市は文書の中で「地域おこし協力隊員制度は今後も適切に運用し、隊員と共に地域づくりを推進します」とコメントしています。今回の和解を契機に、全国の自治体においても協力隊員への具体的な活動指示とメンタルヘルス対策の重要性が再認識されることになりそうです。
地域おこし協力隊制度は地方創生の重要な施策として位置づけられていますが、その成功のためには、単に隊員を募集するだけでなく、活動環境の整備と継続的な支援が不可欠であることが、この訴訟を通じて改めて示されました。



