大川原冤罪事件の遺族が警察大学校で講義 組織の変革を訴える
警視庁公安部による機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)をめぐる冤罪事件で、勾留中に胃がんが見つかり、冤罪が明らかになる前に亡くなった同社元顧問・相嶋静夫さんの遺族が4月9日、警察庁の警察大学校(東京都府中市)で講義を行いました。
この講義は、事件の教訓や反省を今後の捜査や組織運営に生かすことを目的として開催されました。全国の警察で警備公安事件全般の捜査を指導する幹部ら約50人が参加したと伝えられています。
「人として正しくあってほしい」遺族の切実な訴え
講師として招かれた相嶋さんの長男は、講義の中で違法捜査が行われた経緯などを振り返りながら、警察幹部に対して強いメッセージを送りました。
「人として正しくあってほしい。自分の背中を自分の子に見せられるか、考えて」と訴えた長男は、逮捕や勾留が「懲らしめ」ではないこと、人質司法を支えているのは誰なのかという根本的な問題にも言及しました。
警察が冤罪事件の関係者を招いた講義を行うのは異例のことです。長男は今年1月にも代理人弁護士とともに同校で都道府県警の幹部を対象にした研修を行っており、今回は2回目の講義となりました。
警察組織の変革を感じた遺族の思い
講義後の取材で、長男は次のように語りました。
「警察が変わろうとしてくれているんだなというのはひしひしと感じた。組織が間違った方向に進みそうになったときは、大川原化工機のことを思い出し、正しい方向へ軌道修正してもらいたい」
この言葉からは、遺族が警察組織の内部改革に期待を寄せている様子がうかがえます。同時に、同じ過ちを繰り返さないための強い願いが込められています。
大川原冤罪事件の法的経緯
大川原化工機冤罪事件をめぐっては、軍事転用可能な機器を不正輸出したとして逮捕・起訴されたのは違法だとして、同社社長らが国と東京都に賠償を求めて提訴していました。
東京高等裁判所は2025年5月、捜査を尽くさずに逮捕・起訴したのは違法などと認定する判決を下しています。
さらに、相嶋さんの遺族は今月、逮捕や勾留を認め、保釈請求を退け続けた裁判官37人の判断は違法だとして、国に賠償を求めて東京地方裁判所に提訴しました。
この事件は、捜査機関の違法行為だけでなく、司法システム全体の問題をも浮き彫りにしています。
警察教育への影響と今後の課題
警察大学校での遺族講義は、警察組織が自らの過ちと真摯に向き合おうとする姿勢を示すものです。しかし、このような取り組みが単発的なものに終わらず、持続的な組織改革につながるかどうかが今後の課題となります。
冤罪事件の防止には、以下のような取り組みが不可欠です:
- 捜査手法の透明性向上
- 内部告発者保護制度の充実
- 司法取引制度の適正運用
- 警察官の倫理教育の強化
大川原冤罪事件の遺族が警察大学校で講義を行った意義は、単に過去の事件を振り返るだけでなく、未来の警察組織のあり方を考えるきっかけを提供した点にあります。警察幹部たちがこの講義から何を学び、どのように実践に移していくかが注目されます。



