イラン情勢で燃料高騰、美濃焼など中部の焼き物産地に深刻な打撃
イラン情勢で燃料高騰、美濃焼など中部の焼き物産地に打撃

イラン情勢によるコスト高騰、美濃焼の産地にも直撃 各メーカー、価格転嫁の判断はいかに?

米国などによるイランへの軍事作戦の開始から3カ月が経過した。原油輸送ルートのホルムズ海峡は事実上の封鎖が続き、中部地方の焼き物産地を苦しめている。ガスや重油の高騰が陶磁器メーカーを直撃。梱包材などさまざまな関連資材の値上がりや品不足も見られ、業界は早期の正常化を願っている。

美濃焼産地の現状

陶磁器が作られる工場。後方は窯業炉=27日、岐阜県多治見市星ヶ台で

「値上げは5月の仕入れ分から始まっていて、燃料の高騰分を請求する企業もある。値上げが続くようだと、卸価格にどう反映していけばいいか」。美濃焼産地の一つ、岐阜県多治見市の陶磁器商社でつくる多治見陶磁器卸商業協同組合の安藤英利理事長(73)は苦しげに語った。

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地元の燃料販売会社「ヤマカ」(同市)によると、量産品の食器などの焼成に使う液化石油ガス(LPG)の価格は、ここ2カ月で1トンあたり6万円ほど値上がりした。大規模な陶磁器メーカーは月に100トン前後使うといい、単純計算で月に600万円ほどの負担増となる。

陶磁器メーカーでつくる同県陶磁器工業協同組合連合会の松原朝男会長(76)は「すべてを価格に転嫁することはできない。量産品などは利益が小さく、経費の増加が続けば、事業に見切りを付ける企業が出てくるのでは」と危惧する。現時点で国の補助はなく、多治見市は市議会6月定例会に陶磁器メーカーの燃料費などを補助する補正予算案を提出する方針だ。

多治見市が生産量日本一を誇るタイルは、泥状の土を高温で乾燥させる際に重油を使う。ヤマカとタイル原料製造「YMM」(同市)の副社長を務める加藤誠二さん(73)によると、重油の仕入れ価格はイランへの攻撃前から約1.5倍にはね上がり、毎月の燃料費は100万円単位で増えた。このままでは値上げが避けられないという。

タイル原料の値上げは高騰している住宅やマンション、ビルの建設費をさらに押し上げかねない。加藤さんは「業界みんなが、早くイラン情勢が落ち着いてほしいと思っている」と早期の収束を切望した。

同じくコスト高騰に悲鳴、中部地方の他の焼き物の産地

中部地方には知名度の高い焼き物の産地が集まり、燃料費などの高騰は各地で悩みの種になっている。

国産土鍋の8割を占める三重県四日市市の萬古焼。萬古陶磁器工業協同組合の熊本哲弥理事長(61)は「ガス単価が1キロ当たり60~70円上がった」と嘆く。単純計算で1日6万~7万円のコスト増となり「供給は安定しているが、価格上昇は痛手」と語る。

悩みは燃料だけにとどまらない。信楽陶器工業協同組合(滋賀県甲賀市)の橋本浩参事は、うわぐすりをはじく油性はっ水剤などの値上がりや品不足を挙げ「当面は在庫で対応できるが、長引けば製品価格に転嫁せざるを得なくなる」と懸念する。

常滑焼の窯元でつくるとこなめ焼協同組合(愛知県常滑市)の渡辺角幸理事長(76)は、招き猫などに使う顔料の高騰に触れ「これだけ高くなると、品物も値上げせざるを得なくなる」と吐露。付加価値の高い製品づくりや高値で売れる輸出先の開拓を進める。

福井県越前町の越前焼工業協同組合では、原料の粘土を乾燥させないよう保存するナイロン製の袋が不足。価格は2年前までの7倍となる1枚35円に高騰し、一度使用した袋を洗って再利用しているという。

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瀬戸焼の生産者らでつくる愛知県陶磁器工業協同組合(瀬戸市)の担当者は「梱包材も値上がりしており、今後が心配」と案じる。加賀九谷陶磁器協同組合(石川県加賀市)の喜多仁嗣専務理事も「長期化すると影響が出てくるかもしれない」と明かした。