帰還困難区域の森林再生、本格始動へ
東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の森林整備を巡り、関東森林管理局は2025年度、浪江町を中心に国有林で約10ヘクタールの実証事業を拡大する方針を示した。これとは別に、福島県によると、森林整備と放射性物質対策を一体的に進める「ふくしま森林再生事業」が本年度、浪江町と葛尾村の帰還困難区域内にある民有林で始まる見通し。東日本大震災と原発事故後、15年も手付かずだった森林・林業の再生へ本格的に動き出す。
意見交換会で説明
帰還困難区域を抱える市町村と林野庁、県、林業関係者らによる初の意見交換会が同日、浪江町で開かれ、管理局と県が森林・林業再生の取り組みを説明した。
優先順位と実証事業
管理局によると、帰還困難区域内の国有林は約1万7000ヘクタール。森林整備は避難指示解除を進める「特定帰還居住区域」に戻って生活する住民の安全、安心の確保に必要な地域や空間放射線量が毎時2.5マイクロシーベルト未満の場所を優先させる方針だ。地域を選んだ上で、森林に立ち入れるよう林道の再整備に先行して着手する。
帰還困難区域の国有林での実証事業は昨年度に始まり、浪江町津島地区の6カ所計0.12ヘクタールで除伐や間伐が行われた。歩いて放射線量を測定したり、立木の樹皮や土壌に含まれる放射性物質濃度を調べたりした。
本年度は区域外に木材を持ち出せるよう丸太の放射線の計測方法を検討。安全が確認された木材を使って配布品を作り、安全、安心の理解醸成にも取り組む。
ガイドラインと安全基準
林野庁は1月、帰還困難区域での森林作業ガイドライン(運用指針)を策定。放射線量が毎時2.5マイクロシーベルトを下回り、土壌などの放射性セシウム濃度が1キロ当たり1万ベクレル以下の森林では、被ばく線量が法令で定められた限度を下回るとして、管理をしなくても作業ができるとの見解をまとめた。
放射線量が条件を超える場合でも、作業者の被ばく線量を適切に管理し、作業の種類や場所、日数の組み合わせを工夫することで、安全な作業が可能とした。
課題と関係者の声
ただ、国有林の放射線量は昨年度、帰還困難区域の77地点で毎時2.5マイクロシーベルトを上回り、235地点では木材の搬出可能な目安となる毎時0.5マイクロシーベルト超と高線量の地点が混在している。
15年放置されたことで森林は荒れ放題となり、難しい作業が求められる。被災地では林業の担い手不足が顕著で、作業の加速に向けては被ばく線量を十分に抑えられるよう安全管理を徹底できるかが問われる。県森林組合連合会の田子英司会長は「15年間、安全と安心の言葉の違いを嫌というほど感じてきた。作業に従事する人が安心して作業できる環境が民有林にも国有林にも大事だ」と訴えた。



