静岡 金属盗に茶農家悲鳴「泣き寝入りの状況」
静岡県袋井市の茶農家で、茶園に設置された防霜ファンから銅線が盗まれる被害が相次いでいる。金属価格の高騰を背景に、県内の金属盗被害は昨年から倍増しており、農家からは「泣き寝入りの状況」と悲痛な声が上がっている。
防霜ファンの銅線が盗難に
被害に遭ったのは、マルス製茶の鈴木洸暉さん(30)。今月中旬、鈴木さんは茶園に点在する防霜ファンを指さしながら、「ファン同士をつなぐ銅線が、よく見たらなくなっていた」と語った。銅線が盗まれたとみられるのは、作業を休んでいた年末年始。年明けに畑に出た義父が異変に気付いた。高さ5~6メートルの位置で、ファン同士をつないでいた3本の銅線のうち2本がなくなっていた。鈴木さんの茶園全体では、2カ所で計6本が盗まれていた。
防霜ファンは、新芽が伸びる春先に空気を送って気温を上げ、霜の発生を防ぐための扇風機。電気が通らず動かなければ、茶葉が傷んで収穫ができなくなる。銅線がなくなった防霜ファンが風を送る畑の範囲は計約2千平方メートル。鈴木さんは「気付かないまま畑が霜にやられていたら、被害額は膨らんでいた」と危機感をにじませる。
さらなる驚愕の出来事
3月上旬、さらに驚くべき出来事が起きた。別の畑での作業中、乗っていた機械から目に飛び込んできたのは、道の脇に転がるごみ袋。詰め込まれていたのは空き缶と、銅線を覆っていたとみられる樹脂だった。鈴木さんが管理する茶園との関連は不明だが、道の先は行き止まりで、「普通の人は立ち入らないような場所」。窃盗犯の存在を感じ、異様な光景に目を疑った。義父と協力して夜中などに見回りをした。
別の複数の茶農家でも銅線の被害を聞くという。だが、防犯カメラの設置などには費用がかかる。鈴木さんは「作物には手間をかけている分、ショックは大きい。自分たちで極力注意するしかないけれど、限界もある。農家が泣き寝入りするような状況がある」と訴えた。
背景に金属価格の高騰
県警によると、昨年県内で認知した金属盗の被害は約千件。前年の約450件から2倍以上と大幅に増加した。今年に入ってからは、4月中旬時点で約300件の認知があるという。金属の窃盗被害は水道メーターにも及ぶ。公営団地での被害を発表した県によると、今月7日時点で県営住宅では15団地で計179戸の被害を確認。市営住宅での被害は、20日までに静岡市など5市から204戸の報告があった。大半が空室だった。
被害の背景には、金属の価格高騰があるとみられる。非鉄金属大手のJX金属(東京)によると、電気自動車(EV)などにも多く使われる銅は、国内取引価格の指標となる「銅建値」で、2020年1月は1トン当たり70万6300円だったが、ここ数年で大きく上昇。今月20日時点で221万円となっている。
県警生活安全企画課の担当者は「防犯設備がそろっていない場所が被害に遭っている」と指摘。「今は金属自体に価値があると認識し、防犯意識を高める必要がある」と話した。県警は、不審者を見かけた場合の情報提供も呼びかけている。



