SNS(交流サイト)上で恋愛感情を抱かせ、架空の投資などに誘導する「SNS型ロマンス詐欺」の被害が後を絶たない。警察庁のまとめによると、2025年に全国で確認された被害件数は5604件、被害総額は552億円に上る。2023年と比較すると、件数・被害額ともに3倍以上に増加しており、深刻さが増している。
生成AIが詐欺を加速
社会心理学を専門とし、詐欺の手口を研究する日本大学危機管理学部の木村敦教授は、被害拡大の要因の一つとして生成AI(人工知能)の普及を指摘する。「従来のオレオレ詐欺のように短時間で被害者を動揺させるのとは異なり、ロマンス詐欺は最初は金銭の話を一切せず、1~数カ月かけて関係を構築するのが特徴だ」と説明する。
詐欺犯は世間話から接触を重ね、悩み相談など深い話題へと移行。さらに秘密を共有することで、被害者を心理的に囲い込む手法を取る。こうした手口は相手の反応に応じて細かくマニュアル化されており、SNSのダイレクトメッセージで接点を持ち、チャットのみで対面しないケースがほとんどだという。
AIで容易になった偽装工作
生成AIの普及により、詐欺犯は会話の文脈に合わせて偽の写真を瞬時に作成したり、相手が喜ぶ言葉を自動生成したりすることが可能になった。長期間のやりとりにかかるコストも低下し、言語の壁を越えて大量の被害者を同時に狙えるようになったと木村教授は分析する。
「最初は詐欺を疑っていても、一度接点を持ってしまうと、親密化のプロセスにのめり込み、自力で抜け出すことは極めて難しい」と木村教授は警鐘を鳴らす。SNS上で知らない人から接触があっても無視し、とにかく接点を持たないことが最も有効な対策だという。
被害者を責めない社会を
ロマンス詐欺は、「欲に目がくらんで騙された」と非難されやすく、被害者も自己嫌悪に陥り、精神的な回復が困難になるケースが多い。木村教授は「実際にはどんな人でも被害に遭う危険性がある。被害者を責めず、自己防衛のために具体的な手口と対策を広く知ってほしい」と訴えている。



