任侠電器 第33回 今野敏
日村の問いかけ
「その三人に何かされたのか?」と日村が尋ねた。
「手を出すほどの度胸なんてないよ。ただの嫌がらせだね」と相手は答えた。
日村はさらに問い詰める。「おまえがなぜそんな目にあったのか、その理由を知りたい」
「私だけ、あいつらの言うことを聞かないからだね」
「言うことを聞かない……?」日村は眉をひそめた。
「標的になった子がいてさ」
「何の標的だ?」
「最初は、何人かがその子をばかにしたりしていたんだけど、そのうちに示し合わせて無視をするようになって……」
いじめの実態
「いじめか」と日村がつぶやいた。
「ばかばかしいって思っていたけど、だんだん腹が立ってきて、私、その子のことかばったんだ。そうしたら、今度は私がみんなに無視されるようになったってわけ」
日村は記憶をたどり、「待ち伏せした三人の中に同じクラスの生徒が二人いたと言ったな」
「そう」
「その二人が首謀者というわけか」
「そうだね。その二人が中心になっている」
日村は疑問に思って尋ねた。「なぜみんなはその二人の言うことに従うんだ?」
「なんでだろうね。逆らうと、私みたいな目にあうからかな」
日村が考え込むと、真吉が口を開いた。
真吉の見解
「いじめって、そういうもんなんですよ」
「そういうもん?」日村は真吉を見つめた。
真吉は続ける。「集団の中で、一人が標的になると、周りは同調圧力に屈してしまう。逆らえば自分が危うくなるからです。いじめの構造は、加害者だけでなく、傍観者も作り出しているんです」
日村は深くうなずいた。「なるほど。それで、おまえはその輪から外れたわけか」
「ええ。でも、その結果がこれですよ」と相手は苦笑した。
日村は決意を新たにした。「この件、もう少し調べてみる。いじめの根本にあるものを突き止めたい」



