緊急避妊薬の薬局販売、静岡が全国最多 人口当たりの取扱数で1位
望まない妊娠を防ぐために性交後に服用する緊急避妊薬(アフターピル)は、2026年2月から医師の診察や処方箋なしで薬局で購入できるようになった。厚生労働省によると、全国1万3千店以上の薬局で販売されている。しかし、取扱薬局数の地域格差が課題となっている中、静岡県は県薬剤師会と県医師会が迅速に連携したことで、人口10万人当たりの取扱薬局数が全国最多となった。
緊急避妊薬の薬局販売には、近隣の産婦人科医との連携体制の構築が要件となっている。県薬剤師会は、2025年10月に緊急避妊薬「ノルレボ」がOTC医薬品として初めて製造販売承認されたことを受け、協力可能な産婦人科医のリストアップを県医師会に依頼。その上で、販売を希望する薬局を募った。
県薬剤師会の鈴木孝一郎副会長(51)は、「薬局が個別に産婦人科医と連携するのは難しいと考え、医師会との包括連携体制を築いた上で薬局に手を挙げてもらった」と説明する。緊急避妊薬を扱う薬剤師には、販売開始前に研修を受講してもらったという。
地域格差の実態
民間団体「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の集計によると、2026年5月8日時点での人口10万人当たりの取扱薬局数は、静岡県が20.64店で最多。最少は熊本県の1.46店で、愛知県は9.63店だった。別の民間団体「#なんでないのプロジェクト」が2月に全国の薬剤師を対象に行ったアンケートでは、販売時のプライバシー確保やトラブルへの不安が挙がった。
鈴木副会長は「これまでのところ、薬剤師の前で服用しなかったなどのトラブルはない」と順調な滑り出しを強調する一方、「薬があるから避妊しなくていい」などの誤った認識が広まらないよう、薬剤師が正しい性知識を購入者に伝える必要があると話す。薬剤師からは外国語対応や購入者のプライバシー確保に関する不安の声も届いており、本年度はフォローアップの研修会を予定しているという。
現場の声と課題
緊急避妊薬は服用が早いほど高い避妊効果が期待できる。浜松市天竜区の「天竜あきは薬局」の薬剤師、菅沼貴仁さん(51)は「販売の可否を判断することに責任を感じる」としつつ、購入希望者が医師の診察を待たなくて済むOTC化を歓迎する。
同店ではプライバシーに配慮するため、二つある窓口のうち、ついたてで仕切られた壁側の窓口で緊急避妊薬の対応をしている。扱える薬剤師は菅沼さん1人のため、事前の電話予約が必要だ。同店をはじめ夜間も電話対応する薬局はあるが、窓口を開けて対応した薬局は多くないという。
菅沼さんは厚生労働省の情報提供の方法に課題を指摘する。同省のホームページには販売薬局のリストがPDFファイルで掲載されているが、1ページに100以上の店名と所在地や営業時間が細かい字で記され、「スマートフォンでは閲覧が難しい」という。検索機能もなく、「必要な人が迅速にアクセスできるように」と改善を要望する。
民間団体「ピルコン」はグーグルマップを使い、各地の販売薬局を調べられるようにしている。



