大阪都構想再挑戦、吉村知事の奇策に違和感
2度の住民投票で示された民意は一体何だったのか。大阪都構想に再び挑戦するという吉村洋文・大阪府知事の姿勢は理解に苦しむ。しかも、大阪市民を対象とした住民投票で失敗したからといって、今度は府民全体を対象に構想の是非を問うというのは、ご都合主義がすぎないか。
府市両議会が法定協議会設置を議決
大阪府、大阪市の両議会がそれぞれ、都構想の具体案を検討する法定協議会を設置することを議決した。構想を推進する日本維新の会代表の吉村氏の呼びかけに応じ、維新議員団が主導した。都構想は、大阪市を廃止し、東京23区のような特別区に分割するものだ。都市整備など広域行政の業務は府に集約し、住民に身近な仕事は区が担う。府と市の二重行政を是正するのが狙いという。
実現するには、大都市地域特別区設置法に基づき、区の境界や権限などを定めた制度案を法定協議会で決定後、府・市両議会で可決し、大阪市民の住民投票で過半数の賛成を得る必要がある。
過去2度の住民投票で否決
しかし、2015年と2020年の住民投票では否決されたため、維新は3度目では与党となった立場を利用し、策を打とうとしている。都構想とは無関係の、副首都を整備する法案の原案に、都構想の実現に有利な条項を盛り込んだ。具体的には、副首都の指定を受ける道府県が特別区を設置する場合、「都」に名称変更できるとした。また、その際に必要となる住民投票では、道府県民を対象に、都への名称変更と特別区の設置をまとめて問う、と定めている。
維新としては、大阪市外の府民なら市の分割に抵抗感が少なく、賛成票を得やすいと考えて、大都市法を改正して府民に問う住民投票を可能としたいようだ。だが、別のテーマに乗じ、悲願の都構想を実現しようという手法は奇策と言わざるを得ない。原案のままでは、堺市や岸和田市などの住民も、大阪市廃止の是非の判断を下すことになる。違和感を覚える人は多いだろう。
吉村知事の公約違反と出直し選
吉村氏は2度目の住民投票の否決の後、「僕が都構想に再挑戦することはない」と語っていた。にもかかわらず、今年1月に知事を辞め、再び都構想を公約に掲げて臨んだ「出直し選」で勝利したことで、改めて住民投票に向けて動き出した。過去2回の住民投票は、いずれも十数億円の経費がかかっていた。何度も住民投票を繰り返していたら、いずれ維新は府民の信頼を失うのではないか。



