東京都中野区長選(5月31日告示、6月7日投開票)をめぐり、自民党が候補者擁立を断念し、不戦敗となる異例の事態となった。衆院選では高市早苗首相の人気を背景に勝利したものの、その勢いを地方選に持ち込めなかった背景には、首長選での連敗や党内の分裂回避など複合的な要因がある。
自民、なぜ候補者を立てられなかったのか
JR中野駅前の複合施設「中野サンプラザ」の建て替え問題などが争点となる今回の区長選。現職の酒井直人区長(3選目指す)のほか、無所属新人3人が立候補を表明しているが、自民党推薦の候補者は不在だ。自民党中野総支部は、現職区議の擁立を模索したものの断念し、自主投票を決定。党員からは「候補者を出さずにどうするんだ」「そんなみっともないことがあるのか」と不満の声が上がったという。
自民区議の擁立断念、家庭の事情も
当初、中堅の自民区議が立候補に意欲を示していたが、家庭の事情で断念。その後も候補者探しを続けたが、適任者を見つけられなかった。総支部関係者は「情けないと言われれば返す言葉がない。支持者には謝るしかない」と打ち明ける。
「高市人気」だけではカバーできない地方選の現実
自民党は2月の衆院選で、中野区を含む東京ブロックで高市首相の高い支持率を背景に勝利した。しかし、地方選ではその勢いを維持できていない。都内でも清瀬市長選や練馬区長選で支援した候補が敗れるなど、首長選での連敗が続いている。
自民党中野総支部の幹部は「首長選で連戦連敗で、『イケイケどんどんじゃない』という空気があった。衆院選は一瞬飛び上がっただけ。高市首相が人気なだけで、自民党に戻ったわけではない」と指摘。さらに「来年の統一地方選で区議会の自民党議員を増やすことが命題」と語る。
保守分裂回避の思惑も
区長選には、保守系の吉田康一郎区議が立候補を表明。右派論客の桜井よしこ氏らが推薦に名を連ねている。自民が候補者を擁立すれば保守分裂の構図となり、酒井区長に対抗する上で不利になる可能性があった。自民側からは「保守分裂を避けることで吉田氏に恩を売り、4年後の区長選で自民候補に一本化する狙いがある」との声も聞かれる。
酒井区長、過去2回の選挙で自民候補を破る
酒井区長は2018年の区長選で、自民・維新推薦の現職・田中大輔氏を破り初当選。2022年の前回選でも自民推薦の新人を退けており、自民にとっては雪辱の機会だったが、実現しなかった。
中野区議会での自民勢力の弱さ
中野区の自民党は、東京23区の中でも区議会での勢力が弱い。定数42のうち自民議員団は8人で、立憲・国民・ネット・無所属議員団(11人)に後れを取る。4月末時点の本紙まとめでは、23区区議会の自民系議席占有率で中野区は19.0%で、杉並区(16.7%)に次いで低い。野党が結束すれば、厳しい選挙になることは明白だった。
区長選には、酒井区長、吉田区議のほか、無所属新人でプラスチック製造会社元社員の石倉弘次郎氏、監査法人職員の森川岳大氏が立候補を表明している。



