愛知県に博物館がない危機、化石や標本が海外流出も 設置活動本格化
愛知県に博物館がない危機、化石や標本が海外流出も

「日本中で愛知県だけに県立博物館がない」として、愛知県の研究者らが博物館の設置活動に力を入れている。県内で発掘された貴重な化石や、研究者が収集した珍しい昆虫標本が、保管先がないために県外や国外へ流出する事例が相次いでおり、「研究や教育に深刻な影響をもたらす」と危機感を訴えている。

講演会で設置訴え

4月29日、大型連休初日の名古屋市科学館で開かれた「化石を語る 文化講演会」には市民ら約150人が詰めかけた。講演会では、愛知県南知多町の師崎層群で発掘された貴重な化石について、全国から集まった研究者が成果を発表した。講演会の冒頭、化石の研究者でもある市科学館館長の大路樹生さんは会場にこう呼びかけた。「この地域には自然史博物館がないことで、自然史標本が散逸の危機にあるのは非常に残念なこと。ぜひ、博物館の設立にご協力いただければ」

標本の流出実態

師崎層群の化石は名古屋大学博物館などのほか、一部は「愛知県にふさわしい博物館ができるまで」との条件で、岐阜県瑞浪市の市化石博物館で保管されている。大路館長は「化石だけでなく、様々な標本も県外に流出している」と話す。大路さんらが2015年に立ち上げた「あいちに自然史博物館を!協議会」は、博物館設置の呼びかけのほか愛知から散逸した化石、生物の標本についても調査している。

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協議会の調査によると、名古屋市の昆虫学者だった故・佐藤正孝氏が集めた10万点以上の標本が台湾の博物館に寄贈されるなど、多くの昆虫標本や化石が三重や岐阜など県外の博物館や国外の大学などに流出しているという。

愛知だけ県立博物館がない

文化庁の博物館総合サイトによると、愛知県内には、名古屋市博物館、豊橋市自然史博物館など市立の施設はあるが、県立施設としては美術館のみ。他の都道府県には総合、歴史、科学系のいずれかの都道府県立の博物館が存在する。名古屋市科学館での講演会後半に開かれた座談会でも、「愛知県は三河地域を中心に自然がものすごく豊か。収蔵と分析が続けられるような県立レベルの施設がどうしても必要だが、愛知だけ県立博物館がない」との声が上がった。

幻の県博物館

なぜ愛知には県立博物館がないのか。実は明治時代には「幻の県博物館」と呼ばれる計画があったが、実現しなかった経緯がある。現在、協議会は県や市町村への働きかけを強めており、2026年までに具体的な設置計画をまとめる目標を掲げている。研究者らは「地域の自然史遺産を後世に残すため、早急な対応が必要だ」と訴えている。

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